■誰が中央権力の中枢部を掌握しているのか、栗戦書か? 孫春蘭か?
胡錦涛政権の中枢を担ったのは団派の令計画だった。息子のフェラーリ事故のもみ消しを、こともあろうに胡錦涛の政敵、周永康(当時、政治局常務委員)に依頼し、旗色が悪くなるや習近平に胡麻をすったが、失脚は避けられなかった。
実弟の令完成が機密文書を持ち出した郭文貴と同時に米国へ逃亡し、慌てた王岐山が密かに渡米したとか、しないとか。中南海の権力中枢で起きているのは内ゲバの後遺症である(その機密文書には北京市長時代の王岐山自身の汚職が書かれているということは先述した)。
令計画は2012年9月に中央弁公室主任の座を突如引きづり降ろされ、統一戦線部長となった。事実上の降格である。
この統戦部長は、本来なら出世コースだが、令計画はすぐに外され、14年12月に失脚した。
後継リリーフは女傑、孫春蘭(前天津市書記、政治局員)である。
そして2015年四月、ふたりの新人副部長が任命された。政商副主席の王正偉と甘粛省の統戦部長だった苒萬祥である。
もう一つ、令計画がつとめた中央弁公室主任は栗戦書になった。栗戦書は団派だが、下放されて下積みの時代に、習近平と肝胆合い照らず仲となった。
12年9月に就任し、翌年四月、二人の令計画の秘書役だった張建平と趙勝軒(ともに弁公室副主任)が取り調べを受けていることが判明した。
14年12月に中弁室秘書局長だった?克、室局長だった陳瑞坪(女)が取り調べを受けていたことがわかり、?は失脚した。
2015年になって二月に王仲田(副主任)が取り調べをうけ、翌月に丁考文(調査研究局長)が中弁室の部長代理に、そして曹清(前警備局長)は習近平に引き抜かれ北京軍区司令員に二弾跳び出世と相成った。
相関図を総覧すると、現在の習政権の制度上、中枢を司る中央弁公室は栗戦書が中心となって回り出したようである。栗戦書の次期政治局常任委員会入りは間違いないと言われる。
▼江沢民派は断崖絶壁? 四分五裂の乱調が明らかに
版腐敗キャンペ-ンの究極の目標、つまり「大虎」は江沢民だが、もし習・王コンビの「版腐敗」が江沢民まで狙うとなると、かりにも国家主席、総書記、軍主任の三権を掌握した国家元首のスキャンダルを内外に露呈することになり、これは国家としての中国の恥辱、歴史上の汚点になる。
習近平がそこまで考えているとは思われず、もうひとりの大虎、曽慶紅の拘束・逮捕・起訴も考えにくい。
しかし、これだけ追求の手がのびて上海閥の評判が悪いとなると、くるりと親分の批判をはじめる元高官もいれば、自己批判をする高官もでてくる。醜い人間模様である。
呉邦邦(元常務委員)は、江西省視察に現れて各地で「反腐敗による党の綱紀粛正を評価し、特権にアグラをかいた政治は改めるべきだ」などときれい事をならべながら嘗ての同僚を猛烈に批判したという。
呉は江沢民の番犬として特段の出世をとげた、いってみれば江沢民の忠臣ではなかったのか。
他方、「自首」が伝えられるのは戴相龍である。
金融界の大物、戴相龍は元中央銀行総裁、天津市長、かれは長らく金融界に君臨し、全国社会保障基金理事長と栄達をきわめた人物である。その戴相龍が、当局に「腐敗バンカー」リストと罪状を告白し懺悔したなどと、まことしやかな噂が飛び交っている。
戴相龍リストには、中国の銀行頭取、副頭取、理事長、副理事長クラスおよそ50名が列挙されており、具体的に香港での資金洗浄からタックスヘブンへの不正送金補助、高官の海外への財産隠しを手伝った具体例を列挙しているそうな。
切っ掛けは戴相龍の女婿、車峰が米国に逃亡した郭文貴の豪邸購入に連座しており、この郭文書の発覚によって元国家公安部長の馬建が失脚し、周永康の逮捕、拘束へと繋がったからで、戴相龍は連座で拘束されるおそれがあり、その前に自首したと『争鳴』五月号が報じた。
中南海の深い闇の一端が暴露された。
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