■「約束したプロジェクトは未完成のままではないか」
ブラジル訪問で530億ドルもの天文学的経済支援という大風呂敷を広げてみせた中国国務院総理(首相)の李克強は、次の訪問先ペルーで現地メディアから酷評され、立ち往生した。
「ブラジルから山岳を越えてペルーへ4400キロの鉄道を敷設し、中国への輸送ルートを短縮させる? 悪い冗談だろう。そんな無謀な計画が完成されるチャンスはありえない」とまで書かれた。
「銅山開発にしても、完成どころが、多くの中国のプロジェクトは宙に浮いている。そもそも過去に約束された中国のプロジェクトは、どれもこれも実にいい加減であり、取り扱い注意である」と批判されている事実を香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』が伝えた(同紙、2015年5月25日)。
じっさいにブラジルのメディアは99%がポルトガル語で英語媒体が不在のため、この香港メディアのみが上記事実をつたえている。
ともかく各地で「調和の取れた共同作業」などと謳いながら中国企業の現地雇用は殆どなく、鉱山開発にしても、資源価格暴落以後は、プロジェクトそのものが中断され、この社会的責任を中国企業がとろうともしない。
鉄道プロジェクトにしても、事前調査では長いトンネル工事が35カ所に必要であり、万が一、南米大陸横断鉄道が完成しても、船便ルートを短縮できる距離は僅か2000キロでしかない。
そもそも、このプロジェクトは政治的工作が目的であり、中国の提案はすべて警戒を要するのである、と南米メディアの批判に李克強首相は驚いたらしい。
とくに鉄鉱石、銅、亜鉛などが南米諸国のおもな輸出品であり、ブラジルは2012年の対中貿易は200億ドルの黒字だったが、鉄鉱石需要が急減したため、13年は40億ドルの赤字となった。ペルーもアルゼンチンの似た境遇にある。
かわって牛肉の輸入増大が中国から約束されたものの、いまだに注文がないと牧畜業者がぼやいているともいう。
まともに付き合うと必ずソンをするのが中国とのビジネスであることが、ようやくラテン・アメリカの陽気な国民にも分かってきたようである。
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