■分断された「多弱」野党、再編の展望開けず…
民主党と維新の党の共闘路線が揺れている。最近まで、来年夏の参院選で民主、維新両党が選挙協力を行い、自民党の「1強多弱」の打開を狙う-というシナリオがまことしやかにささやかれていた。
しかし、安倍晋三首相(自民総裁)と維新最高顧問の橋下徹大阪市長が14日に会談したことで、空気は一変。官邸サイドの「民維共闘」分断策ともされ、野党再編の行方を左右することになりそうだ。
安倍首相と橋下氏は14日夜、東京都内のホテルで3時間にわたり会談した。安倍首相は橋下氏の国政進出に期待感を示し、橋下氏も憲法改正の重要性を力説し意気投合した。2人の“接近”は維新の党だけでなく、民主党にも波紋を広げた。
というのも、民主、維新両党の選挙対策責任者、野党再編推進派らは5月の大型連休以降、連日のように会合を重ね、参院選に向けた選挙区調整の必要性で一致していたからだ。橋下氏が5月の住民投票で「大阪都構想」が否決され、政界引退を表明してからは、その流れが加速していた。
しかし、橋下氏は会談後、安全保障法制に対する姿勢などを理由に「民主党とは一線を画すべきだ」とツイッターに書き込んだ。
維新内にはもともと「自民党よりも、民主党と一緒にみられることの方が不快だ」(幹部)という声が少なくなかった。それだけに、今回の会談で流れは一気に変わった。
このままの民維共闘の機運がしぼめば、参院選での与党圧勝が確実になってくる。
維新の党は改選数2以上の都道府県選挙区での独自候補擁立に前向きで、おひざ元の兵庫、大阪、京都の3府県で候補を立てれば、民主党現職との激しい「つぶし合い」が展開されることになる。
関東でも同じ。改選数3の千葉県では自民党が候補を2人擁立する方針を決めており、維新の党がここで新人を擁立すれば民主党の現職と競り合うことになり、3議席目を共産党が奪うという事態も現実味を帯びてくる。
このため、維新内には「安倍政権に近づき過ぎるのは得策ではない」という意見も根強い。そんな空気を察知したのか、松野頼久代表は17日の党首討論で、安保関連法案をめぐる与党との修正協議について「応じるつもりは全くない」と明言した。
江田憲司前代表も15日、修正協議を否定した。安倍政権に近づく大阪系と、民主党出身の松野氏ら非大阪系の溝は広がるばかりだ。
ただ、維新の党の「自民党に対抗する政治勢力の結集」という目標は、民主党と共通している。
民主党の岡田克也代表は19日の記者会見で、民維連携の方針について「変わらない。協力できるところはしっかり協力していく。多数の横暴を許してしまうのでなるべく協力すべきだ」と強調。
「民主、維新を支持した有権者の期待は与党と共同歩調を取ることではない」とも付け加え、野党結集の必要性を訴えた。
いずれにしろ、「多弱」野党は再編への展望が開けていない。
野党同士が競り合えば、得をするのは安倍政権だ。ある民主党幹部は、維新の党との選挙協力が実現しないまま参院選に突入した場合について「民主党の獲得議席は30議席台にとどまる…」との分析を示している。
官邸サイドの民維分断策は今のところ成功しているといえそうだ。(産経政治部 山本雄史)
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