■モデルのメッセージはギリシャ危機対応への抗議? 〝暗殺依頼〟?
「アンゲラ・メルケルを殺してください-やめて」。先月25日(現地時間)、パリで開催された「リック・オウエンス」の2016春夏メンズコレクションのランウェイで、1人の男性モデルが掲げた白い布にはそう書かれていた。
ファッションの世界にふさわしくない物騒なメッセージ。いったい何が起きたのか-。
日本でも人気の高いブランド「リック・オウエンス」。貫頭衣のようなノースリーブのトップスに半端丈のパンツ、雨靴のようなブーツ。革やシルクなど多様な素材を駆使したルックが続き、奇っ怪なヘアピースで顔を覆っているモデルも登場する。
会場が騒然となったのは、ショーの中盤。淡い水色の衣装を身につけたモデルが、黒いマーカーで「PLEASE KILL ANGELA MERKEL - NOT(アンゲラ・メルケルを殺してください-やめて)」と書かれた白い布をランウェイで掲げたのだ。
メッセージの正確な意味は不明だが、ドイツのメルケル首相を名指ししており、デフォルト危機にあるギリシャの債務交渉を示しているように取れると一部の海外メディアも報じているが…。
■デザイナー激怒、モデルを殴る
デザイナーのリック・オウエンス氏はファッション専門紙WWDに、「私はバックステージに戻ってきた彼を殴りました」と語った。そのモデルはこの12年間、ブランドのミューズだったという。
問題のモデルはJeraというドイツ人で、フィナーレには姿を見せなかった。
どうやら、会場から追い出されたようだ。ブランド側は「(メッセージは)モデルの個人的な声明」であるとし、「16年春夏コレクションショーで行われた1人のモデルによる抗議行動の責任はオウエンスにはない」との声明を発表した。
米ニューヨーク・タイムズ紙の電話取材で、オウエンス氏は「結局は、私が(モデルの行動)を創ったのかもしれない。私が挑発するような環境を作っていたことで、彼は“リックの世界”では何でもできると思ったのでしょう」と話した。
皮肉なことに、今回のコレクションは“male aggression(男性の攻撃性)”を表現しており、図らずもモデルのとった行動と合致した。
■何かと話題多いリック・オウエンスのショー 今回はモデルのスタンドプレー
確かに、「リック・オウエンス」のショーは毎度話題に尽きない。15-16秋冬メンズコレクションでは、下着をつけずに男性モデルらがランウェイを闊歩(かっぽ)、“その部分”が見え隠れして物議を醸した。2014春夏(ウィメンズ)では、ボリュームたっぷりのたくましい女性ダンサーらが、雄たけびを上げながらステージを踏みならすという演出だった。
今回、件のドイツ人モデルが何を思い行動したのかは謎のままだ。奇しくも、「リック・オウエンス」の2016初夏コレクションののテーマは「Cyclops」で、ギリシャ神話に出てくる一つ目の巨人・キュクロプスを表す。
このため、“ギリシャ危機”と関連づけたメッセージと解釈するのはうがちすぎか。当の本人が沈黙を守っているため、騒ぎは大きくなるばかりだ。
あるいは、勝手に騒ぎが大きくなることを見越しての沈黙なのか…。(産経)
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