19465 上海株急落に狼狽する投資家 国家コントロールは効果薄   古沢襄

■訪日客「爆買い」も萎縮か

中国当局による金融市場へのコントロールが効いていない。欧米メディアによると、中国当局が扇動的な市況報道を控えるように報道機関にお達しを出したほか、相場操縦の取り締まり強化や上場投資信託(ETF)の大規模購入なども打ち出したが、下落基調から脱出できていない。

7月3日時点の上海株式市場の総合指数は、約3週間前に比べて30%もダウン。8日も取引開始直後に一時、前日比8%以上急落し、投資家の狼狽ぶりが浮き彫りとなっている。一方、日本では、訪日中国人による「爆買い」の萎縮への懸念も出始めた。急落する中国株は、中国経済への過度な依存を戒めている。

 
■“報道規制”でも株下がる

英BBC放送(中国語電子版)は6月23日、中国が放送メディアなどに対して、「暴騰」や「崩壊」といった言葉を禁じたうえ、正式発表の情報を適切に報道するよう通達を出したと報じた。

不安をあおる悲観的な報道を抑制する狙いとみられ、裏を返せば、そこまで中国政府が追い詰められているわけだ。

6月28日の追加利下げは、そんな中国の焦りを鮮明にしたが、市場への関与はこれにとどまらない。

証券会社か投資家が資金や株券を借りて売買する信用取引の緩和や株式取引手数料の引き下げを打ち出したほか、6月半ばから、「相場操縦」の調査も初めているという。

ロイター通信によると現地のチャイナ・デイリーは、株価指数の先物取引にかかわる投資家を対象に調査を進めていると報じた。7月3日からは中国の主要市場に上場する企業の多くが、新たな事業計画や再編などを公表するまでの間、株式の売買を停止したという。

相場の下支えに期待された大手証券会社21社による計1200億元(約2兆4千億円)以上の資金投入策の発表も効果薄で、7月6日の上海市場は乱高下。投資家の不安を払拭できなかった。

 
■共産党員より多い中国投資家

中国株の下落はどれほどの投資家に打撃を与えるのか。

「株式ブームが急激にしぼんで個人投資家の多くが痛手を負い中国経済への打撃となる恐れがある」。ブルームバーグはこう警戒を促す。

中国証券登記結算(CSDC)のデータでは、株式投資を行っている中国国民は現在9000万人を超える。

中国国営新華社通信によると、中国の共産党員数は昨年末時点で8780万人。投資家は共産党員数を上回っているほどに膨らんでおり、ブルームバーグは「毛沢東が1949年に中華人民共和国を建国した際には想像していなかった事態だろう」と指摘。ドイツの人口を上回る投資家が殺到したことが株価上昇の背景だと分析した。

世界の富豪をランキングしたブルームバーグ・ビリオネラ指数によると、中国の富豪の資産の目減り額は、約340億ドル(約4兆1800億円)に及ぶという。

 
■株バブル崩壊で中国客撤退?

一方、ロイター通信によると、日本人投資家の中国株の保有額は10億ドル程度で、さほど大きくはない。

中国株の損を取り返すため、日本株を投げ売りする投資家は少ないとみている。ただ東京や大阪、京都など日本の観光地での中国人訪日客による「爆買い」への影響を懸念。「日本のインバウンド消費」が減速する可能性を指摘した。

かつて尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化をめぐる日中関係の悪化で、中国人観光客が激減した時期があったが、今回は株のバブル崩壊が中国客撤退のきっかけになるのか。移り気で不安定な国情にある中国からの訪日客に頼ってばかりでは、日本経済も危うい。中国株の急落は、そんな警告を発しているのかもしれない。(産経)

 
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