■「収容8万人にこだわったのはサッカー協会」 日本記者クラブ会見要旨
2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の森喜朗元首相は22日、日本記者クラブで記者会見し、総工費が2520億円に膨らみ、整備計画が白紙撤回となった新国立競技場の問題について、「私は大変迷惑している」と不快感を示した。会見の要旨は以下の通り。
「組織委員会というのは、五輪がうまくいくように準備し、いい会場を設営するのが仕事だ。新国立競技場の問題については、私は大変迷惑している。組織委員会が『こうしてくれ』『ああしてくれ』といったわけではない。新国立競技場は国が造るものだし、それに東京都が協力するということだ」
「組織委員会がスタートして1年半がたった。いま、総勢で380人くらいいる。これはどんどん増えていく。東京五輪は5年後の7月24日が開幕となるから、今月24日にセレモニーを予定している。大会のエンブレムの発表もその日に行う。このエンブレムをつくると、国際社会の全部の商標権と抵触しないか調べないといけない」
「今後、トータルで組織委員会が負担する金額は7000~8000億円になると思う。東京都が3000億円だ。組織委員会と都の金額に比べて、国が負担するのは新国立競技場だけだから、ずっと金額は低い。
そういう目でみなさんには見ていただきたい。新国立競技場の2520億円が高いか安いか。五輪で使う施設の建設費を総合すると実は国が一番安い。
このあたりの数字は安倍晋三首相はご存じない。こういうことを下村博文文部科学相は知っているんだから、もう少しきちんとそういう説明を閣内でしないといけなかった」
「国立競技場の建て替えは、ラグビーのワールドカップ招致がきっかけになって政府は重い腰を上げた。レガシー(遺産)としての残るもの、すばらしい聖地をつくらなければならない。
もう一つ、収容人数を8万人に一番こだわったのはサッカー協会だ。サッカーのワールドカップを誘致するには、8万人というのが約束事だ。そうした希望を受け入れたものをつくるのがスポーツファンのためにもなるだろうということで、新国立競技場の計画はできた」
--新国立競技場の計画を見直すとしても、あまり圧縮しすぎてはよくないか
「アスリートが必要なものはいっぱいあるから、はじめにこの額だよといってしまうとどうなのか。見直す以上は設備的に、施設的に落ち度のないものにしてもらいたい」
--五輪を開催する7月は暑い
「それは頭が痛いことだが、私はかつて安倍首相に2時間のサマータイムを導入したらどうかといったことがある。
安倍首相は『みんな反対するのでねえ』といっていたが、それが先ごろ導入された「ゆう活(ゆうやけ時間活動推進)」ではないか。ただ、選手は暑いことを頭に入れた練習をしていると思う」
--安倍首相が五輪の開催時も政権を運営している可能性は
「これはなかなか大変な問題だが、個人的な感情をいえば、2020年の五輪の開幕宣言も安倍首相にやってもらいたいなという気持ちはある」
--首相として?
「首相でなきゃできないですね。安倍首相が首相として宣言できるように、しっかり内閣を運営し、国民のためにしっかりやらなければいけない。日本国のためにやるということは、必ず国民に理解してもらえるだろうし、またそうでなければいかんと思っている」
--新国立競技場の建設費はいくらぐらいが妥当か
「いくらかかるか、いくら縮小するかということは基本的な設計をして、みなさんが考えることだ。建設会社はどうもうけるかを考えるわけだし、もう一方はできるだけ安くしてほしいなということだ」
--どのような競技場をつくってほしいか
「組織委員会はそういうことを考える組織ではない。やる資格もない。発言権もない」
--関心があれば口を挟むか
「それはできないと思う。こちらから『ああしろ』『こうしろ』とはいえない。国立競技場をスポーツだけではなくて、文化の聖地にしようというのがみなさんの気持ちだ」
--新国立競技場の整備計画見直しをめぐる責任問題をどう考えているか
「機構上、JSC(日本スポーツ振興センター)や文部科学省が扱う素材ではなかったと思うが、それまでの慣例でそうなったのだろう。
従って、どこに責任があるというのはなかなか難しい問題だが、全体で負わなきゃならんことだと思う。日本の役所というか、機構上の問題だろうと思う。責任をどうこうということも大事だが、新たに官邸が責任をもってやるといって不退転の気持ちでやっているから、それを全部見てからでいいのではないか。
そこでだれか責任をとらせたり、犯人を出したりしてもプラスはないと思う」
--文科省が難しいボールを持ちすぎた?
「持ちすぎてどこにボールを渡していいかわからなかったということだろう」
--パスをよこせという人もいなかった?
「いなかった。だからそのうちにタックルされて、わやわやっとなっちゃった」
--遠藤利明五輪相に期待することは?
「遠藤さんは大臣に就く前から、スポーツ関係で極めて重要な役まわりを果たしてきた。スポーツ基本法の改正とか、サッカーくじの導入とか。多年の悲願であったスポーツ庁の設置をめぐって国会対応の中心になったのも遠藤さんだ。
遠藤さんが長い間、日本のスポーツ政策をどうしたらいいかということに一番熱心に取り組んできた。何もかもしっかり目配りできると思うし、どのスポーツ団体からも喜ばれるだろうし、各省庁も安心していると思う。
新国立競技場については、五輪のあとも、スポーツと文化の殿堂という形で残ってほしいと思う。日本中の子供たちや若者たちやアスリートが、神宮外苑を目指すというふうになってもらえるような競技場であってほしい」(産経)
<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>
コメント