19568 豪潜水艦開発「日の丸連合」多国籍体制に   古沢襄

■英企業参画へ=スウェーデン企業も日本との協業に関心

7月23日、豪潜水艦開発で、日本の官民連合に英企業が加わる方向で協議が進んでいる。

[東京/シドニー 23日 ロイター]豪潜水艦の選定手続きに参加する防衛省や三菱重工業(7011.T)など日本の官民連合に、英国の企業が加わる方向で協議が進んでいることが明らかになった。武器の輸出市場に参入したばかりの日本は、経験豊かで現地の事情に通じた外国企業のノウハウを取り込みたい考え。

スウェーデン企業も日本との協業に関心を寄せており、「日の丸連合」は総額500億ドルとも言われる巨大事業に、多国籍体制で臨もうとしている。

<バブコック社が協議、BAEも>

日英の複数の関係者によると、英エンジニアリング大手のバブコック・インターナショナル・グループ(BAB.L)が、参画に向けて日本の防衛省と協議をしている。

豪州で事業を展開し、豪海軍の現行潜水艦コリンズ級の保守・管理に関わる同社は、日本連合のコンサルティングを請け負うことを提案している。

さらに豪海軍のキャンベラ級強襲揚陸艦を手掛け、同国内で4500人を雇用する英軍需大手BAEシステムズ(BAES.L)も、協業相手に浮上している。

昨年4月に武器の輸出規制を緩和した日本は、防衛装備品の共同開発や輸出の経験不足が指摘されている。

支持率低下に悩むアボット首相率いる豪政府は、潜水艦の性能やコストだけを選定基準にするのではなく、自国産業の振興につながる提案を求めており、次期潜水艦の建造計画は複雑さを増している。

「(日本は)小学生1年生がいきなり数学の応用問題を解いているようなものだ」と、日本の関係者は言う。
 

<対抗馬は独ティッセンクルップ>

豪政府が進める共同開発相手の選定続きには、ドイツのティッセンクルップ(TKAG.DE)とフランスの国営造船会社DCNS社も参加している。なかでも豪州に拠点を持つティッセンクルップは、豪海軍が条件に挙げる米国製戦闘システムの搭載にも問題がなく、日本の最有力対抗馬と見る向きが多い。

ティッセンクルップが豪政府に内々に提示した文書によると、同社案は現地産業の支援を強調。ドイツが持つ先進の生産技術を活用し、豪州をアジア太平洋地域における造船産業のハブ(中心)にすることを約束している。
 

南オーストラリア州選出の与党・自由党のエドワーズ上院議員は「豪州で建造することは避けられない。日本にとっては問題だろう」と話す。

もともと豪政府は、海上自衛隊のそうりゅう型潜水艦の技術に関心を示していた。

潜水艦の性能面では今も日本が優位と見られているが、「豪州で事業を展開したり、産業支援策の取りまとめという面では、ドイツやフランスに後れを取っている」と、 事情に詳しい関係者の1人は指摘する。

<スウェーデンのサーブ社も>
 

日本は武器開発の国際プロジェクトの経験豊富な英国の企業と組むことで、そうした弱みを補完できる可能性がある。

「現地企業を使うにしても、どこがいいのか悪いのか、アドバイスが期待できる」と、日本の政府関係者は話す。バブコックとBAE以外にも、関心を寄せる英企業があるという。

傘下の造船会社が豪海軍の現行潜水艦を開発したスウェーデンの防衛大手サーブ(SAABb.ST)も、日本連合への参画を打診した。同社は今も潜水艦の保守・管理に携わっており、助言が期待できると日本の防衛省関係者はみている。

防衛省はロイターの取材に対し、「豪州からは将来潜水艦の能力、コスト、スケジュールを不必要に損なわない範囲で豪州企業の参加を最大化してほしいとの要望がある」とした上で、「国内外の企業などから豪州企業に関する情報収集を行っているが、具体的な事柄については控えたい」と回答。バブコック、BAE、サーブはいずれも回答を拒否した。

日本は防衛省を中心に、潜水艦建造メーカーの三菱重工と川崎重工業(7012.T)が官民連合を結成している。現在は三菱重工が主導して提案書を作成中。一行は5月末に訪豪し、南オーストラリア州の造船施設などを視察した。(ロイター)

<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

コメント

タイトルとURLをコピーしました