19618 海自の“不審船キラー”はやぶさ型ミサイル艇   古沢襄

■夜間も時速80キロで猛追尾 でも乗り心地は… 

 
平成11年3月23日、石川県能登半島沖で、海上自衛隊のP3C哨戒機が日本の漁船にふんした北朝鮮の工作船2隻を発見した。

海自の護衛艦や哨戒機、海上保安庁の巡視艇などが追跡。停船を呼びかけるが工作船はそれを無視し、最大35ノット(時速約65キロ)のハイスピードで逃走した。

政府は海上自衛隊に初となる海上警備行動を発令したものの、工作船を取り逃がす結果となった。いわゆる「能登半島沖追跡事件」だ。

この苦い経験から誕生したのが海自の「はやぶさ」型ミサイル艇だ。船体の全長は50メートルと小型だが、即応性、機動性に優れることから“不審船キラー”の異名を取る。

不審船などの不法行為に対する哨戒や沿岸防備を主な任務とし、16年3月までに同型として「わかたか」「おおたか」「くまたか」「うみたか」「しらたか」が立て続けに就航している。乗員は約20人。建造費は一隻当たり94億円程度とされる。

高速の不審船や工作船を追跡できるようウオータージェット推進を採用している。3基のガスタービンでウオーターポンプを稼働させ、海水を吸い込み、それを船尾から噴出することで前進する。

これにより、スクリューによる推進力では難しい最大速力44ノット(時速約80キロ)を実現した。船型をディープV型船底形状にすることで、荒波でも高速を発揮できる工夫も施されている。

ただ、高速化の意外な代償もある。ミサイル艇はジェットウオーターを採用しているため揺れが激しい。そのため、本格的な調理ができず、食事はレトルト食品が中心となる。海上自衛官は「はやぶさ型での任務中はおいしい“隊メシ”にありつくことは不可能」と苦笑する。

装備も重視した。艦尾には2機の艦対艦誘導弾、艦首には主砲として76ミリ単装速射砲を備えている。単装速射砲は対空、対艦両用で、自動化と遠隔操縦により砲塔内を無人化としている。

夜間でも追跡を可能にするため、赤外線暗視装置や、威嚇射撃や正当防衛時の射撃などに使用する12・7ミリ単装機銃も装備。後部甲板には、工作船を停戦させた際、立ち入り検査隊を送り込むための複合型作業艇が搭載されている。

船体の主要部位には複合材を使用した防弾板を採用している。また、ミサイル艇はいかに敵艦に気付かれることなく接近できるかが肝心になるため、船体や主砲にステルス化が図られているのも大きな特徴だ。

はやぶさ型をめぐっては、「P3C」哨戒機などとともに、フィリピン軍が導入に関心を示しているとされる。南シナ海での岩礁埋め立てなど、一方的な海洋進出を図る中国への抑止力が念頭にある。(産経)

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