ASEAN=東南アジア諸国連合の一連の外相会議に出席するためマレーシアを訪れているアメリカのケリー国務長官は、岸田外務大臣との会談を前に記者団の取材に応じ、「原爆の日」の平和記念式典に言及したうえで、各国が核兵器削減に向けて取り組むべきだという考えを示しました。
この中でケリー国務長官は「広島での平和記念式典は70年前に終わった戦争を非常に強く思い出させた。同時に核兵器がさらに増える可能性を減らすためにイランとの間で達した最終合意の重要性をきわだたせた」と述べました。そして、「アメリカと各国、特にロシアは既存の核兵器の削減へ向け、取り組んでいる」と述べ、各国が核兵器削減に向けて取り組むべきだという考えを示しました。
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■世界の核軍縮の現状
世界の軍事情勢を分析しているスウェーデンのストックホルム国際平和研究所が、ことし6月に発表したところによりますと、世界各国が保有する核弾頭の数は去年より、およそ500発減って1万5850発と推計されています。
世界の核軍縮を巡っては、NPT=核拡散防止条約で核兵器保有国とされるアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5か国が核兵器の削減を進めることが求められています。
このうち、世界の核兵器のおよそ9割を保有するアメリカとロシアは、4年前に発効した戦略核兵器の削減を定めた核軍縮条約「新START」に基づき、軍縮を進めています。
しかし、さらなる核兵器の削減については、ウクライナ情勢などを巡って両国の関係が冷え込み交渉は進んでおらず、核廃絶に向けた動きは停滞しています。
また、NPTの核保有国の中でも、中国については核兵器を増強しているとみられ、ストックホルム国際平和研究所は中国保有の核弾頭の数を前年よりも10発多い260発と推計しています。
一方、NPTに加盟せずに核兵器を開発してきたインドやパキスタン、それにイスラエルには核軍縮に向けた動きは見られません。また、NPTから一方的に脱退を宣言し、核実験を行った北朝鮮は今も核開発を続けています。
一方、NPTの加盟国でありながら核兵器開発の疑惑を受けてきたイランは先月、アメリカなど関係6か国との間で、今後15年間にわたって核開発を大幅に制限する見返りに、国際社会による経済制裁が解除されるという最終的な合意に達しましたが、膨大な合意の内容が着実に実施されるかが課題となっています。
核保有国は5か国と定めたNPT体制の空洞化が指摘されるなか、ことし5月には5年に1度のNPT再検討会議が開かれましたが、核兵器の非保有国から核軍縮が停滞していることに強い反発が上がり、会議の成果に当たる「最終文書」も採択されずに閉幕し、世界の核軍縮の先行きは不透明感を増しています。(NHK)
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