19683 人民元、あと5%下落の可能性も・・・   古沢襄

[シンガポール 13日 ロイター BREAKINGVIEWS]人民元はそのうち値を戻すかもしれない。しかし中国経済の弱さや物価の下振れという状況は、もしも人民元が対ドルであと5%下落しても当局が気にしない可能性があることを十分に示唆している。

もっとも人民銀行(中央銀行)が人民元安の意味を世界にどう解釈させたがっているかとなると話は別だ。人民銀は人民元を3日間で約4%押し下げた後でさえ、単に需給を相場により反映させるための調整にすぎないと主張している。

こうした言い分を疑ってかかるべき理由は2つある。1つ目は、あれだけ熱心に人民元の国際化を推進した中国当局としては、自分たちで切り下げを認めるのは難しいだろうということ。より大事な2つ目は、中国にとって人民元安が利益になるのは誰が見ても分かることだ。

中国の物価上昇ペースは米国よりも鈍く、政策当局からの介入がなければ今のディスインフレは年内に完全なデフレへと転じかねない。中国経済が膨大な債務を抱えている点を考えれば、物価や賃金の下落を座視するのは大きな間違いだろう。
 

そこで時計の針を2011年まで戻す必要がある。当時は中国にとって初めて、対外競争力の喪失が問題になった。11年を通じて人民元相場は実質ベースで14%上昇し、年末には1ドル=6.294元となった。その半分の7%分下押すとすれば、目安になるのは6.75元で、足元からさらに5%低い水準を意味する。

こうした値下がりが起きれば、輸出業者は恩恵を受ける可能性があるとはいえ、多額のドル建て債はもちろんのこと、海外の銀行に対する債務も約9630億ドル抱える中国企業にとって厳しさが増す。

だが他国はもっと大きな悩みを抱えることになる。中国において裁量的な消費が減れば、またしても世界経済は米国の消費頼みに戻ってしまう。中国政府があえてこんな危険を冒そうとしていることからすると、経済全体に弱さが広がっているのだろう。

中国当局が安定を唱えるのは、為替市場における意図に悪意はないと彼らが主張するのと同じぐらい、虚しさが見えてしまう。

●背景となるニュース
 

*人民銀行が13日公表した人民元の対ドル基準値は1ドル=6.4010元で、今週に入ってからの下落率は約4.7%となった。基準値公表後の人民元相場は6.4102元とやや元安に振れた。

*人民銀行の易綱副総裁は13日、人民元を10%切り下げるとの一部報道を「根拠がない」と否定。中国の力強い経済環境と持続的な貿易黒字、健全な財政状況、多額の外貨準備が為替レートに「しっかりした支え」を提供していると強調した。(ロイター)

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