■タイ軍事政権と中国の関わり
【8月29日 バンコク/タイ AFP】タイの首都バンコク(Bangkok)で今月17日に発生し20人が死亡した爆発事件で、タイ警察は29日、事件に関与した疑いで男1人を逮捕したと発表した。この事件では初の逮捕者。
バンコク中心部のエラワン廟(びょう)(Erawan Shrine)で起きた爆発は、単一の事件としてはタイ史上最多の犠牲者を出した。
チャクティップ・チャイジンダー(Chaktip Chaijinda)国家警察副長官は29日午後、同国の放送局「T News」で生中継された記者会見で、報道陣に対し「1人を拘束した」と述べた。「彼のアパートで爆弾を製造する際に材料となる資材を発見した。この男は爆発事件に関与したものと考えている」と話した。
警察は、爆発の直前にバッグを置き去る様子が現場付近の防犯カメラによって捉えられていた、黄色いTシャツ姿の外国人とされる容疑者を捜索していたが、チャクティップ副長官は、拘束された男がカメラに映っていた男と同一人物かどうかは「まだ明らかになっていない」と述べた。(AFP)
■バンコク爆破事件の犯行グループは中国からやってきた 宮崎正広
ウィグル人109人を北京へ強制送還した報復か? ――中国は否定
バンコクの観光名所「エラワン廟」で起きた爆破テロは世界を震撼させた。
犯人の一人は写真を公開され、また前方にいた二人の不審な男達の存在があって「容疑者」とされた。
犠牲となったのは20名で、このうち11名が外国人。しかも7名が中国人だった。5名が中国大陸から、ふたりは香港からの観光客だった。ほかに日本人を含む120名余が重軽傷を負った。
このため、さきにタイから北京へ強制送還されたウィグル人109人に対する「報復」説が急浮上し、犯行グループは中国からやってきたイスラム原理主義過激派のテロリストであり、一ヶ月前から準備していた等と分析された。
タイ当局は「犯行グループは十名と考えられるが、写真を公開した三人のうち、一人はすでに国外へ出国した」とし、主犯格はまだタイに潜伏しているとした。
駐タイ中国大使館はこれらの説を否定し、「何の証拠もない、かような憶測はとんでもない無責任な言動」とした(『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』、8月21日)。
しかしタイ軍情報部スポークスマンは「国際テロ組織の犯行とは断定できず、タイ南部にいるイスラム過激派のテロという線で捜査している」と国内のテロリストの可能性を強く主張している。
■タイ軍事政権と中国政権 古沢襄
ロイターは昨年六月にタイ・バンコクから「タイ軍事政権、警察や地方からタクシン派一掃を推進」と報じた。
大胆な予測情報だったが、私はタイ軍事政権と中国政府がこのところしきりに関わりをもっているとみた。タイ軍事政権は、タクシン元首相の政権復帰を阻止するためタクシン派の一掃を進めているが、中国との協力が必要になってきた。
[バンコク 5日 ロイター]タイ軍事政権が、タクシン元首相の政権復帰を阻止するためタクシン派の一掃を進めている。クーデターで全権を掌握した国家平和秩序評議会(NCPO)は、元首相の支持層の多い北部や北東部の13州の知事を他州へ移動させたことを明らかにした。
さらに同評議会は、元首相とその妹のインラック前首相の強力なよりどころとなっていたタイ警察についても再編している。元首相は自らの事業を開始するまで13年間、警官として勤務していた。
ロイターが入手した評議会の資料によると、この1週間で少なくとも17人の上層部が異動になった。タクシン派の締め出しは法務省特別捜査局(DSI)まで及び、タリット局長も任を解かれたという。タリット氏はコメントを拒否した。
警察と軍事政権の広報担当者はいずれも、これらは政治的粛清ではないと説明。陸軍の広報官、Winthai Suvaree氏は「適切な任命だ」と述べた。
ただ、バンコク警察のある高官は匿名を条件に「警察の要職と軍部との結び付きを確実にするための異動が体系的に行われている」と指摘。タクシン元首相とのつながりを断つことが目的だとの見方を示した。
タクシン元首相は2006年のクーデターで政権を追われ、当時の軍事政権により政治的影響力を制限されたが、2011年には妹のインラック氏が首相に就任した。現軍事政権は、2人の政権復活を確実に阻止することを目指している。
軍事政権は、インラック前政権が行っていたコメ買い取り制度に代わる新たなコメ農家向け価格保証制度の導入を計画。地方におけるタクシン派の影響力を削ぐのが狙いで、すでにコメ農家に支給する15億円をローンで確保した。
■タクシン派の地盤
2006年(平成18年)のタイ軍事クーデターによって失脚したタクシン・チナワット元首相の支持者が中心となっていることからタクシン派とも呼ばれている
この団体はクーデターの黒幕とされる枢密院議長のプレーム・ティンスーラーノンやクーデター後に暫定首相を務めたスラユット・チュラーノンらを象徴とする「軍部や官界を基盤としたエリート層」が国政を支配する体制を、議会の解散と選挙の実施で打破することによってタイに民主主義を確立することを目指して活動している。
タクシンの出身地であるタイ北部や、貧困層の多いタイ東北部を地盤とし、主に農民や低所得層から支持されている。
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