19726 プーチン大統領、北京の軍事パレードは「寄り道」   宮崎正広

■極東沿海部、シベリア開発が最大の関心 狙いはウラジオストックだった

9月4日、北京で開催された軍事パレードに参加すると、思いのほか「歓待」された余韻のなか、プーチン大統領はロシア極東部ウラジオストックへ飛んだ。つまり彼にとって、北京は「寄り道」に過ぎなかったのだ。

同日からウラジオストックで開催されていたロシア政府主催の「経済フォーラム」における基調講演のためである。

かつてAPECが開催された国際会議場には日本、韓国、そして中国ならびにアセアン諸国などから、およそ300名の経済界代表があつまり、プーチンの投資呼びかけに聞き入った。

プーチンが極東開発に寄せる熱意は並々ならぬものがあり、2010年のAPEC会場をウラジオストックと定め、大開発を指令した。シベリア、極東部からロシア人の人口が激減し、他方で中国人の流入がとまらないことも、焦燥の背景にある。

市内の対岸にある無人島=ルインスキー島に橋を架け、森を伐採して豪華ホテル、大庭園、会議場を突貫工事で建設し、APECに間に合わせた。それほどの力の入れようだった。

またウラジオストック西方にある北朝鮮と中国国境の三角地帯開発にも熱心で鉄道網を拡充し、輸出港としての機能整備につとめた。

筆者は平成21年、まだ建設が緒に就いたばかりのルインスキー島を取材したが、原野を急ピッチで開発中だった。ナホトカでは、せっかくできたチャイナタウンがゴーストタウン化していたのが印象的だった。

過去数年、ビジネスが予想外に低調なため、あらかたの中国人は去ったが、現場労働者はロシア人ではなく、いまでは北朝鮮やウズベキスタン、タジキスタンなどからの出稼ぎが主流だ。

笛吹けど踊らず、という感じだった。

 ▲「東方重視」にはちまきを締め直した

こんかい、プーチンが改めて極東開発に大号令をかけている背景には経済の低迷と西側の制裁によりロシア投資が激減したことから、経済発展の目標地域を東方へ移転させたことが挙げられる。

第一にクリミア併合、ウクライナ問題で、西側のロシア制裁に出くわし、先進諸国からの対ロ投資が100億ドルに激減(これは対中投資の十分の一)。このためロシア景気が低迷し2015年はマイナス成長が確実視されている。したがって、当面の転換策として、極東開発を「東方重視」と銘打って力点を移すわけだ。

第二に原油価格下落により、輸出が激減したため石油とガスの新しい顧客に、なんとしても中国、韓国、日本への接近を果たさなければならない。ルーブル下落は逆にいえば、輸出活性化のチャンスでもある。

第三に、しかしながら一番頼りにする日本が態度を硬化させている。

とりわけ、北方領土問題の解決が放置されているうえに、メドベージェフ首相の択捉島訪問で、日本を怒らせてしまった。

あまつさえ、西側のロシア制裁には「サハリン3」が含まれるため、ガス施設、パイプライン工事などが大幅に遅れている。

ウラジオストックの「経済フォーラムに日本は閣僚派遣を検討していたが、取りやめとなり、また経済界からも商社マンなど五十名余しか参加せず、ウラジオストックから撤退するトヨタは参加を見合わせた。

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