■環境関連NPOの委託を受けた米大学の調査
フォルクスワーゲンのディーゼル車の不正が発覚するきっかけとなったのは、世界各地で活動する「国際クリーン交通委員会」という環境関連のNPOの委託を受けアメリカのウエストバージニア大学が行った調査でした。
このNPOによりますと、調査は2013年から去年にかけて、不正なソフトウエアの搭載が指摘されているフォルクスワーゲンの「ジェッタ」と「パサート」、それにBMWのディーゼル車の3つの乗用車を対象に行われました。
調査では、高速道路や市街地、登り坂などを走行して排ガスの数値を測定しました。その結果、BMWの乗用車が、おおむね基準並みの数値だったのに対し、フォルクスワーゲンの「ジェッタ」は窒素酸化物の排出量が基準の15倍から35倍、「パサート」は基準の5倍から20倍だったということです。
排ガス試験の際の、フォルクスワーゲンの車の数値は基準をクリアしているのに、実際に路上を走行しているときの数値が大きく基準を超え、あまりにかけ離れた結果となったことを受けて、このNPOは、アメリカの環境保護局など規制当局に連絡することにしたと説明していて、これが今回の不正の発覚につながりました。
■専門家「耐久性と燃費高めるねらいか」
フォルクスワーゲンのディーゼル車の不正が発覚するきっかけとなった調査を委託したNPO「国際クリーン交通委員会」のメンバーで、自動車工学を専門とする早稲田大学大学院の大聖泰弘教授は、「フォルクスワーゲンのディーゼル車の排ガスに問題があるという指摘を受けて、実際の車で調べた結果、基準の数倍から30倍以上の窒素酸化物の濃度が検出された。
さらに調査を進めた結果、意図的にプログラムで操作しているのが実態ではないかという認識に至った」と話しました。
そのうえで大聖教授は、「不正なソフトウエアを使えば排ガスの処理システムが長持ちし、燃費もよくなるので、車の耐久性と燃費を高めるねらいがあったのではないか。また、コストをかければ排ガスの処理はできるが、フォルクスワーゲンは、比較的価格の安い中小型の車が多いので、コストが大きくなるのを嫌ったのではないか」と指摘しました。
■世界でトヨタとトップ争い
フォルクスワーゲンは、世界での新車販売でトヨタ自動車と激しいトップ争いを繰り広げています。グループ全体の販売台数は、去年、トヨタのグループに次いで2位でしたが、ことし6月までの上半期ではおよそ504万台とトヨタを僅かに上回り、初めてトップに立ちました。
ディーゼル車をエコカーの柱と位置づけるヨーロッパでは高いシェアを維持しつつ、世界最大の市場に成長した中国ではいち早く現地生産に乗り出し販売台数トップを続けています。
さらに、買収を通じて、高級車や商用車まで幅広いブランドを傘下に収めたことも規模拡大の原動力となりました。その一方、今回の問題が発覚したアメリカでは、ビッグスリーと呼ばれる地元の3大メーカーや、日本メーカーなどとの激しい競争のなか、1980年代後半に現地生産から一時撤退するなど苦戦しています。
4年前にアメリカでの販売拡大を目指して現地生産を再開しましたが、グループのシェアは3%程度と伸び悩んでいて、地元のGM=ゼネラル・モーターズやフォードに次いで14%程度のシェアを持つトヨタグループとの差を縮めることができない状況が続いています。(NHK)
<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>
コメント