韓国で近代史回顧が盛んだ。最近の朝鮮半島をめぐる国際情勢が19世紀末から20世紀初めにかけての時代によく似ているというのだ。歴史は繰り返される?
韓国人は「歴史まみれ」といわれるように歴史が大好きだ。現在や未来を過去になぞらえてあれこれ議論することを好む。しかし過去はすでに結論が出ているわけだから、現在や未来を「歴史は繰り返す」式に語るのは楽だ。したがって歴史談議というのは楽で安易なことでもある。
19世紀回顧がはやっているのは、朴槿恵(パク・クネ)政権下で対中国接近が目立つからだ。安倍晋三政権下の日本も安保法制などで対外影響力の拡大を目指しているようにみえる。そして大きな背景として中国の台頭による米中対立の展望が加わる。
朴大統領の中国・抗日戦勝70周年記念行事参加の後、歴史回顧はいっそう盛んで、中国への警戒心も結構ある。マスコミ論評では「朴大統領の訪中成果は過大評価されている」(東亜日報9月18日、千英宇・元大統領外交安保首席秘書官)や「中国は韓国の統一を望まない」(朝鮮日報9月15日、金大中論説顧問)など朴大統領の対中外交に手厳しい。
歴史回顧とは保守派(右派)の場合はこうだ。
韓国の亡国の背景には、当時の覇権国家・英国のロシア封じ込め策があった。英国は東アジアでその役割を日本に託した。
この情勢に鈍感だった韓国は日本を牽制(けんせい)しようとロシアを引き込む「親露拒日」策を進めたため、日本は親露派の中心だった王妃(閔妃)を暗殺し、日露戦争でロシアを追い出し韓国を支配した。
現在は英国を米国、ロシアを中国とすれば分かりやすい。米国が中国封じ込めで日本との同盟関係を強化しようとしているとき、韓国は「親中反日」路線で行こうとしている。これで大丈夫か? 亡国の二の舞いにならないか?というのだ(『未来韓国』9月2~15日号の特集「露日戦争、今日の教訓」から)。
一方、進歩派はこうだ。野党系の左派紙『ハンギョレ新聞』(7月16日)は朴大統領の訪中前から「明成皇后(閔妃)と朴槿恵」と題する論評で19世紀を回顧している。
論評は「両者とも列強の間で民族の生存に責任を背負った運命にある」としながら「朴大統領も明成皇后の失敗の道を歩んでいるようだ」と現状を批判。閔妃についてはコトあるごとに清(中国)の軍隊を引き入れ勢力を維持しようとしたが、朴大統領は米国に依存し過ぎ軍事演習で中国を刺激していると批判している。
この論評が言いたいことは、変動する東アジア情勢の中で、いつまでも米韓同盟にしがみつき対北強硬策ばかりやってていいのか?というわけだ。
ただ、19世紀との違いは韓国が国力をつけ、米中とも韓国を味方につけようと「韓国の値段が上がっていること」だとし、対米・中均衡外交(米国離れ?)に期待。最後は「国を滅ぼした悲運の王妃になるのか、国を生かした国母になるのかは朴大統領にかかっている」というのがオチだ。
片や親中国はいい加減にしてもっと親米をやり、反日も考え直せといい、片や米国離れをして北朝鮮とも仲良くしろという。朴大統領もつらい? 近く訪米し韓米首脳会談の予定だ。韓国外交の行方について内外の疑問、懸念、注文にどう答えるか、興味深い。(産経)
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