19899 書評『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ』   宮崎正広

■グローバリズムという妖怪の正体はいったい誰々か かれらの思惑と目標は金融の世界支配なのか

<馬渕睦夫『アメリカの社会主義者が日米戦争を仕組んだ』(KKベストセラー)>

次々と意欲作を世に問う元ウクライナ大使は、日米の真の和解のために、まず知っておくべきは歴史の裏側の真相だと言う。

グローバリズムという、わけのわからない主張を展開する社会主義者は、「革命家」という表の仮面を剥がすと、そこには、「国際金融資本家」という真相の風貌が現れる。ロシア革命も、支那事変も、「日米戦争」も、かれらがウィルソンとルーズベルトを操作して巧妙に仕掛けたという裏面がある。

日本の近現代史は、自虐史観に脳天を侵されて久しく、左翼歴史家は、とくに階級史観や社会主義が進歩であるという奇妙なメンタリティに取り憑かれ、「不確実な明日のために確実なこんにち」をぶちこわし、破壊することに熱中してきた。

自虐史観など、それをGHQと一緒にばらまいた日教組や、左翼マスコミは「国家反逆罪」ではないか、と馬渕氏は提議され、現状の世界の絵解きから始める。

そこには民間企業でしかない連邦準備制度が法定通貨を発行するという、かれらの「傑作」が作動している。

まずはプーチンを悪役に仕立て上げるためにウクライナに暴動、騒擾を惹起したのは、「かれら」だった。

プロの傭兵軍団をウクライナ東部に投入し、プーチンをそそのかしてロシア軍の介入を呼び起こし、プーチンの転覆を謀ろうとした。それらはジョージ・ソロスの論文などでも明らかだが、慎重且つ入念に対応したプーチンが役者が一枚上だった。

シリアの泥沼にお手上げとなった欧米を尻目に、ロシアは空爆につづいて地上軍を投入したが、アメリカはプーチンが反政府軍を攻撃していると非難している。反政府軍とはアメリカがテコ入れしている武装ゲリラのことである。

プーチンを徒らに敵視するのは愚かしいことであり、日本はプーチンの年内訪問を熱心に説いており、また日米首脳会談で安倍首相はアメリカの了解を密かに取り付けたと馬渕氏は推定する。

国益を考えてみれば、日本は最大の仮想的中国の背後にあって、つねに中国を脅かすロシアに欧米と束になって敵対する必要はないのである。

ならば中ロ蜜月はどうなるか、という問題があるが、馬渕大使の回答は明快このうえない。

すなわち「中国経済は日米欧などの製造業が進出したお陰で急速に発展した模倣経済にすぎないことから、(ロシアがいかに)中国との経済関係を強化しても、ロシア経済の近代化に繋がることは決してありません」。

だから中ロ蜜月など、ときが来れば雲散霧消するのである。

なぜか。英国元首相パーマストンの次の箴言がある。

「永遠の敵国はいない。また永遠の友好国もいない。永遠に存在するのは国益のみである」と。

グローバリストの正体は社会主義。彼らのなかには「日米戦争」をしかけた陰謀家がおおく、なによりも支那事変とは日本と中国の背後にあった英米との戦争であったように、表面のあぶくだけを見ていると、地下水流の流れはつかめないのである。

それにしても共産主義国家では、いかに簡単に生命を軽んじた大虐殺が繰り返されるのだろうか。

「彼ら流の『あるべき未来の姿』というイデオロギーには現実を無視するという論理的必然性があるからだ、未来のみに軸足を置き現在を無視する。結局、道徳を無視する結果」を産むことになるのである。ロシア革命も、中国革命も、カンボジアのポルポトの大虐殺も、すべてはそうだった。

現在日本に予測される最大最悪の事態とは、中国の経済失速(それはいまや秒読みだが)により中国で本格的な暴動が発生し、中国経済が壊滅するときに排外主義の謀略、暴力が起きるだろうと馬渕氏は言う。

「暴動が反政府運動に発展し、反政府運動の矛先をかわすために中国政府が排外主義を扇動する可能性が強い」

となると上海事件、通化事件のように駐在邦人の大虐殺がまたおこりうるだろう、と不気味な近未来を予測する。

本書は国際情勢に通暁する元大使の憂国と警告の書である。

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