■TPPが大筋合意などと言ってもアメリカ議会が批准するのか? その米国の傲岸不遜、傲慢な性格が外交を悉く失敗させているのではないのか
<マックス・フォン・シュラー『「太平洋戦争」アメリカに嵌められた日本』(ワック)>
このところ、アメリカ人の日本論が従来の日本=悪、太平洋戦争はファシズム日本をやっつけた等という一辺倒な解釈から抜け出して、安全保障を前面に出しながら、日本の正しさを擁護する、あるいは日本の評価をきわめて客観的になそうとする著作を顕す客が増えた。
嚆矢は元ニューヨークタイムズ東京支局長のヘンリー・スコット・ストークスだ。つづいて テキサツ親父、ケント・ギルバート氏。
この本の著者のマックス・フォン・シュラー氏は海兵隊で岩国に駐屯、しばらくして日本にすみつき、爾来四十年余。日本人女性と結婚し、日頃は結婚式牧師をつとめている。
安芸の宮島に案内したとき、アメリカ人は氏の説明に耳を傾けなかった。
つまり、アメリカより古い歴史があることなど訊きたくもない。知りたくもない。アメリカが世界一自由で正義の国であり、安保条約で日本をまもってやっている国だから、もうちょっと妥協しろ、アメリカのクルマを買えという論理になるのだという。
自分だけが正しい、絶対に正当だとして譲らず大声を張り上げる性癖は、どことなく中国人とそっくり。
アメリカ人はアメリカが日本に民主主義を与えたと本気で信じ込んでいる。冗談もほどほどにして欲しいが、日本は世界最初の憲法(十七条憲法)を誇り、明治維新には五箇条のご誓文がある。
このことを言うとアメリカ人は怒り出す。その傲慢さが、イラク戦争を間違わせた。
著者は書いていないが、チュニジア、リビア、エジプトのアラブの春の大間違い、ウクライナでの反プーチン暴動の演出と失敗。そしてシリアへの中途半端な介入の失敗など、例を挙げればきりがないが、そもそもソ連を誕生させ、膨張させたのはアメリカであり、毛沢東を支援したのもアメリカであり、それらの失策がブーメランのようにまわってアメリカを撃った。
本書はそうして文脈から近代史への日本人自虐史観を糺すことにもなるが、本書の最後で指摘している水不足の深刻さ、食料が不足したときのアメリカの衰弱を予測しているあたり、とくに参考になった。
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