小説家の古沢元は可愛がっていた猫を着物の懐にいれて小説を書いていた。三代の猫の名は「三吉」。
「三吉」の名の由来はいまもって分からない。
ジャーナリストになって最初の赴任地は仙台。その夜、デスク部長の渡辺定さんに連れられて東一番町のおでん屋に行った。おでん屋の名が「三吉」だから驚いた。
県庁職員だったオヤジが脱サラで店の中に立ち、美人揃いの女性たちが皿に注文されたおでんをよそってくれるので繁盛していた。酒は秋田の新政、辛口だが結構いける。
おまけに”ツケ”で飲めたので、入り浸ることになった。二年間の勤務が終えて、東京本社に転勤になったので、転勤旅費をはたいて「三吉」のツケを払った。
秋田の特殊神事で≪力の神≫三吉霊神の名がある。江戸時代から梵天(ぼんでん)と呼ばれる依代(よりしろ)を神社に奉納しているで、東北人の古沢元はそれをとったのかもしれない。
左翼から転向した古沢元は江戸文学・井原西鶴の研究に活路を見いだそうとした時期がある。西鶴の文献の中に「三吉」の名があるのだろうか。
西鶴の「好色五人女」で取り上げられた八百屋お七の物語の中で「三吉大明神」が出てくる可能性があるのだが、江戸文学に疎い私の手にはおえない。
私は猫よりも犬が好きである。1992年生まれの愛犬チロ、その息子バロンを自分の家族と思ってきた。いまは二代目バロン(2006年生まれ)と寝起きしている。
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