日中韓三国首脳会議が行われたが、これによって日本、中国、韓国の三国のささくれだった関係が良い方向に転じると過大な期待を持つのは禁物であろう。
中国と韓国が歴史問題にこだわり、とくに朴槿恵大統領が慰安婦問題を持ち出すかぎり日韓の提携、融和は困難である。
三国首脳会議ではFTA=自由貿易協定の締結に向けた交渉を加速することで一致したが、対立する諸問題には深入りせずに経済、貿易問題にしぼった会談になっている。
しかし日中、日韓の二国間首脳会談では、中国、韓国から対立する課題が持ち出されよう。事実、中国の李克強首相は三国首脳会議の最後に日本に対して、歴史問題で前向きな対応を促している。安倍首相にとって、なんとも答えようがない李克強発言ではないか。
■日本と中国、韓国の3か国の首脳会議は、1日午後、韓国の大統領府で行われ、首脳会議の定期的な開催と、来年、日本で会議を開催することで一致するとともに、日中韓3か国のFTA=自由貿易協定の締結に向けた交渉を加速していくことなどを確認しました。
安倍総理大臣、中国の李克強首相、韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領による日本と中国、韓国の3か国による首脳会議は、1日午後2時すぎからソウルにある韓国大統領府の迎賓館で始まり、およそ1時間半余りにわたって行われました。3か国の首脳会議が開催されるのは、2012年5月以来、3年半ぶりです。
会議の冒頭、議長国・韓国のパク大統領は、「世界経済成長のけん引車ともいえる東北アジア地域において、政治・安全保障の面における葛藤と反目をもたらす問題を解決できずにいて、協力の潜在力が、十分に発揮できずにいる。きょうの会議をきっかけに3か国協力を正常化し、東北アジア地域において平和と協力の秩序を立てていくことを期待する」と述べました。
続いて安倍総理大臣は、「今回のサミット開催によって、日中韓プロセスは正常な状態に戻った。サミット定例開催への回帰を日本として支持する。3首脳で建設的な議論を行い、3か国の国民、また地域の人々にとって、また地域の人々のためになる大きな成果を得て、来年の日本でのサミットにつなげていきたい」と述べました。
中国の李首相は、「3か国は、グローバル経済の発展、地域の安定に対して重要な影響力を持つ国で、協力すれば大きな役割を果たすことができる。しかし協力というものは歴史などの敏感な問題を善処するうえで成り立つ。一部の国の間では、いまだに深い理解が成り立っていない。われわれは、その相互理解を進めたいと思っている」と述べました。
このあと、安倍総理大臣は、戦後70年のことし、総理大臣談話を発表したことに言及したうえで、「歴史を直視すると同時に、未来に向かって協力することも必要であり、また特定の過去にばかり焦点をあてる姿勢は生産的ではない、日韓および日中の間には協力と発展の歴史がある、日中韓協力の前向きの歴史をさらに紡いでいきたい」と述べました。
そして会議では、日中韓3か国の首脳会議の定期的な開催を再確認し、来年、日本が議長国を務め、日本で会議を開催することで一致しました。
また日中韓3か国のFTA=自由貿易協定の締結に向けた交渉を加速していくことや、温暖化対策を話し合う国連の会議「COP21」で、法的拘束力のある、すべての締約国に適用される合意に向けて協力していくことを確認しました。さらに、朝鮮半島情勢に関連し、核兵器の開発に関する国連安保理決議などを忠実に実施すべきだという認識で一致するとともに、緊張を引き起こす、いかなる行動にも反対することを確認しました。
■パク大統領「歴史的な意義大きい」
韓国のパク・クネ大統領は、3か国首脳会議の終了後の共同記者発表で、「北東アジアの平和と繁栄のための重要な枠組みである3か国間の協力体制が復活したことは、歴史的な意義が大きい」と述べ、首脳会議の定例化で合意したことを明らかにし、日中韓3か国の枠組みを正常化する契機になったと評価しました。
そのうえで北朝鮮について、「朝鮮半島の平和と安定の維持は、共通の利益であり、北朝鮮の非核化の目標を堅持しなければならないことを再確認した。北朝鮮の核問題を巡る6か国協議の早期再開のために、ともに努力していく」と述べ、北朝鮮の非核化に向けて3か国が一致して対処していくことを強調しました。
さらにパク大統領は、「今回の首脳会議で成し遂げられた成果を基に、今後も揺らぐことなく3か国の協力を発展させていく」として、日中韓3か国のFTA=自由貿易協定の締結に向けた交渉を加速させることを含め、幅広い分野での協力を推進していく考えを示しました。
■李首相「3か国の協力を強化すべきだ」
およそ3年半ぶりに韓国で開かれた日本と中国、韓国の首脳会議のあとの共同記者発表で、中国の李克強首相は「3か国が東アジア地域の経済発展のためにバランスをとる重しになるべきだ」と述べ、東アジアの経済一体化に向けた3か国の協力を強化すべきだという考えを示しました。
この中で李克強首相は、「今、世界経済の回復に力強さがなく、アジア経済の繁栄が続くかどうかに各方面の関心が集まっている」としたうえで、「3か国は東アジアの3大経済大国で、地域の発展のけん引役だ。地域の経済成長や金融安定のためにバランスをとる重しになるべきだ」と述べました。
そして、3か国のFTA=自由貿易協定の交渉を加速するなど、東アジアの経済一体化に向けた協力を強化すべきだという考えを示しました。一方、李首相は「われわれは、歴史を直視して未来に向かい、歴史の敏感な問題を適切に処理して3か国の協力を進めることで一致した。3か国の指導者の対話メカニズムを2度と妨害してほしくないし、また、そうならないと信じている」と述べ、日本に対して、歴史問題で前向きな対応を促しました。(NHK)
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