20031 山羊の乳を飲みたい  古沢襄

大学時代の友人・松野勝治さんから、しばらく音信がなかったので、気にかかっていたが、「厳しい闘病生活の中で力強く日々を過ごされているのに驚きました。精神力の強さは並大抵ではないですね。私ならとうにポシャっています。”しっかりしろよ”というメッセージをもらった気がします」と便りを頂いた。

松野さんは四年ほど前に「脳動脈瘤」がみつかり、以後、毎年CT検査をしているという。兄弟が脳動脈瘤で亡くなっているので、心中穏やかではないが、高齢なので手術ができない。医者からはこれ以上瘠せないようにといわれている。

体重53キロは痩せすぎだと思う。やはり体力を回復するのが、病魔と闘ううえで先決。

松野夫人はお元気だと思うが、山羊の乳で忘れられないことがある。母は牛乳を飲むと腹具合が悪くなり、私にも遺伝したのだろう。牛乳を飲むと猛烈な下痢をしてとまらない。

そんな打ち明け話をしたら、松野夫人も同じで山羊の乳のヨーグルトを探して食べていると言った。

「山羊の乳?」

山羊の乳には、あまりいい想い出がない。戦時中に農村に勤労動員をかけられ、昼には農家からドンブリ一杯の山羊の乳を振る舞われた。せっかく振る舞って貰った山羊の乳だから、文句をいう筋合いではないが、あの匂いはどうもいただけない。

松野夫人の話を聞きながら、信州に疎開して農村に勤労動員をかけられた戦時中のことを思い出していた。

それが岩手県で講演会の宴席で県会議員氏に話をしたら、翌日、四合ビンに入った山羊の乳を持ってきてくれて「ためしに飲んでみろ」と勧めれた。

飲んでみたら、山羊特有の匂いがない。絞った山羊の乳を冷蔵庫で一晩冷やすと匂いが消えるという。牛乳と違って腹具合が悪くならないから、いっぺんに”山羊の乳党”になった。

ただ残念なことに関東周辺では山羊の乳が手に入らない。牛乳で腹具合が悪くなる人もかなりいる筈だが、山羊の乳の市場価値はまだ低い。来春に東北に行く時に、事前に県会議員氏に頼んで、山羊の乳を持ってきて貰おうと思っているのだが・・。

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