20072 中国のネパール投資がインドを越えたという驚きの事実   宮崎正広

■ヒマラヤ山脈にトンネルを掘ってカトマンズと結ぶ構想にも本気

青蔵鉄道というのは青海省西寧からチベットのラサを結ぶ高山鉄道。すでに完成し、日本からも鉄道ファンが乗りに行った。

この鉄道は既にチベットの首都ラサからシガツェ(第二の都市、パンチェン・ラマの拠点)まで延びており、中国はこれをネパール国境、山越えの貿易拠点の町まで延長する。

従来、ヒマラヤというそびえ立つ山々が地政学的にも障害となって、中国とネパールが交易することは考えられなかった。気がつけば、中国のネパールへの直接投資は140億ドルにも達しており、全体の30%である。

中国はネパールのハイウェイ、鉄道敷設、水力発電所などの建設をなし、これまで直接投資と言えば、殆どがインド商人のものだったから、状況は激変したことになる。

とはいえ貿易の70%はインドとの間になされ、ネパール国民2800万人のうち、600万人がインドへ出稼ぎにいき、またインド人60万人がネパールで働いている。両国の結び付きは、中国の劇的な参入をみながらも確乎としている。

1950年にインドとネパールは「平和友好条約」を締結し、武器供与はほぼすべてインドが行ってきた。チベットを侵略した中国に抗議し、またチベット難民がネパールを経由して印度北部ダラムサラに向かった。

ネパールのインド依存は強大であり、貿易の70%はインドとの間になされている。したがって2008年までネパールへ中国が本格進出することなど、考えられなかった。

それが変わった。

主因は政変である。ギャネンドラ国王を戴く王制を廃止し、共和国制度へと改変の後押しをしたインドに対して、「大国」「盟主然として傲慢」とする不満が頭をもたげ、ネパールが「チャイナカード」を切ったのだ。

以後、マオイストがネパールに浸透し、一時は政権を担うほどだったが、2014年に選挙で少数派に転落した。この間、中国はネパールに130万ドルの武器供与も行っている。

インドはネパールの二股外交を好ましく思わず、時折ガソリン供給をとめるなどの制裁に走り、この十月には中国が緊急に130万リットルのガソリンを供給した(ネパール全体の年間ガソリン消費は13億7000万リットル)

意外な場所で、意外なことが進行中である。

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