■おそるべき国家犯罪で証拠も挙がっているのに中国はスパイシステムの存在さえ否定する鉄面皮だ
<ウィリアム・ハンナス、ジェームズ・マルヴィノン、アンナ・B・ブシージ 玉木悟訳『中国の産業スパイ網』(草思社)>
中国は国家ぐるみでスパイシステムを構築していることはあまねく知られるが、その具体的実態はといえば、すこぶる曖昧、不透明、つまり闇の中だった。
本書はその闇の部分を照射する。
「創造するよりは相手から盗め」が世界一の得意芸とする中国は、ハイテク技術を先進国から片っ端から盗み出すが、その手段はカネ、恐喝、美人局、なんでもありの世界だ。
あらゆる技術情報、設計図、ノウハウを入手し、それを兵器に転用するシステムを備えた中国の脅威。まさに効率的、合理的ですらある中国の軍事力の基盤は、こうして支えられる。
レーニンが言ったように「やつらは奴らをつるすロープを売る」
事情に精通するアメリカの専門家チームが、この詳細の分析に挑んだ。
証拠をつきつけ、写真も提示し(たとえば91638部隊は人民解放軍専門のサイバースパイ)、否定させないという覚悟で中国に詰問をしても、中国は「法律でいかなるハッキングも中国は禁止している」としゃあしゃあと答える鉄面皮だ。
本書は日本から中国が盗み出した事実をつぎのように紹介している。
「1982年以来、われわれは三菱系三十三社、住友系二十二社、三和系七十二社、三井系、日立、ソニーなど、多くの日本の多国籍企業と科学技術交流の合意を結んできた。また同時にわれわれは日本の人々と科学技術交流の発展を推進するため、経団連、日本国際貿易促進協会、情報サービス産業協会(JISA),技術ボランティア海外派遣協会、日中科学技術交流協会その他の、日本の多数の非政府組織と恒久的な交流関係を確立した」
とこれはさりげなく、中国の科学院技術部の「科学技術交流センター」の資料に書かれているのである。
著者らは言う。
「日本と中国の技術力の差を思えば、はたしてこの「交流」で日本が得るものはあるのだろうか」と。すなわち「日本のためになりそうなことは一つも見あたらない」(327p)。
したがって最後の警告はこうである。
「他の国がみな負担している技術革新のコストをバイパスして一方的に持って行くだけの人たちへの対抗策を考えなくては、努力も国の再建も水の泡だ」(中略)「現在行われている知的所有権の防衛では、どのような見地からみても、世界最大の違反者たる中国による盗用を防ぐのに効果がない。いくら科学基盤を再建しても、その優位性が足下から吸いとられてしまう」(339p)。
<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>
コメント