20112 海自「あきづき」型護衛艦 イージス艦に匹敵する防空能力   古沢襄

■艦隊防空の要 南シナ海で米海軍と共同訓練も

海上自衛隊の護衛艦「ふゆづき」は10月28日、南シナ海の南方海域で、米海軍の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」が所属する部隊と共同訓練を決行した。

訓練内容は乗組員の相互移動や通信訓練など標準的なものだったが、米海軍の駆逐艦「ラッセン」が南シナ海で「航行の自由作戦」を実行した直後だっただけに、注目を浴びた。

海自は「以前から計画していた通常の訓練」と説明し、航行の自由作戦との連動を否定。南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島で人工島造成を進める中国を牽制する意図もないと強調する。

海自によると、南シナ海での米国との共同訓練は年間1~3回のペースで開かれており、決して珍しくないという。

実際、ふゆづきとセオドア・ルーズベルトが訓練を行った海域はスプラトリー諸島からは遠く、人工島周辺に近づくこともなかった。10月中旬に米印両国がインド洋で主催した海上共同訓練「マラバール」にふゆづきも参加し、その帰途に南シナ海で共同訓練を行ったというのが実情のようだ。

ただ、今後は海自艦艇が南シナ海を航行する度に注目を集めることになる。海自幹部は「海自はアフリカ東部のジブチで海賊対処に当たっているため南シナ海は日頃から航行しているが、今のところ哨戒活動などを行う予定ない」としている。

南シナ海で共同訓練を行ったふゆづきは「あきづき」型護衛艦の4番艦にあたる。1番艦のあきづきは汎用護衛艦「はつゆき」型の後継として平成24年に竣工、その後、てるづき、すずつき、最新のふゆづきが建造され、4個ある護衛隊群に1隻ずつ配備されている。

あきづき型の特徴は、イージス艦に匹敵する防空能力の高さにある。イージス艦が北朝鮮などの弾道ミサイル攻撃の警戒に当たっているような状況下では、航空機や潜水艦などによる攻撃への備えが手薄になる。あきづき型はその弱点を補完すべく、護衛隊群の防空機能を担う。

海自幹部は「あきづき型の存在のおかげで、イージス機能を弾道ミサイルに集中することができる」と語る。

前部の艦橋上と後部にはフェーズアレイ・レーダーFSC-3Aを配備。これが同時多目標対処を可能にし、個艦防空だけでなく、艦隊防空の要となっている。目標探知から攻撃までのリアクションタイムも短い。

搭載する艦対空ミサイルには発展型シースパロー(ESSM)を採用。水上打撃力に優れる主砲Mk41VLSから発射される。魚雷発射管や魚雷防御装置、高性能20ミリ機関砲なども備える。

船体は151メートル、全幅18・3メートル、乗員は200人。30ノット(時速約50キロ)の速力を出すことができる。後部甲板はヘリの離着陸が可能で、哨戒ヘリコプター2機を運用できる。(産経)

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