20122 中国で深刻化する大気汚染、電気自動車の好機に   古沢襄

[北京 10日 ロイター]中国の首都・北京市では今週、最も深刻な大気汚染を示す「赤色警報」が初めて発令されたが、これは同国でまだ新しい電気自動車市場にとって好機となっている。一部のディーラーからは、電気自動車に関する問い合わせが1割程度増加しているとの声も聞かれる。

北京市は7日から3日間にわたり赤色警報を発令し、従来のガソリン車やハイブリッド車の運転を1日おきに制限するなどの措置を打ち出した。

電気自動車が規制を免れたことで、購入に興味を示すドライバーから問い合わせが相次いでいると、ディーラーや自動車メーカーは話す。

「新たな対策では、大気汚染がひどい日でも電気自動車の運転が制限されないので、(購入を)検討している」と、比亜迪汽車(BYD)(1211.HK) (002594.SZ)の販売代理店を訪れていたWang Chaoさん(26)は語った。

北京で食品卸売業を営むWangさんはまた、電気自動車の購入に際し、約10万元(約190万円)の補助金が政府から受けられることも魅力だと述べた。

このような補助金など政府が打ち出した対策により、中国では今年1─10月の電気自動車販売台数は前年同期比で約5倍の11万3810台に急増。中国汽車工業協会(CAAM)は、2015年の中国の電気自動車販売は22万─25万台に達し、米国の販売推計値(18万台)を追い抜き、世界1位になるとの見通しを示した。

テスラ・モーターズ(TSLA.O)や北京汽車集団(BAIC)[BEJINS.UL]傘下の電気自動車部門などによれば、北京では大気汚染のせいで電気自動車について問い合わせる潜在顧客が増えているという。
 

「最近は大気汚染がひどいので、誰も外に出たがらない。だから、電話で問い合わせてくる」と、エコカーを中心に取り扱うBYDの代理店を数店舗経営するLi Huiさんは話した。BYDの電気自動車「e6」に関する問い合わせは8─9%増加したという。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の投資会社バークシャー・ハサウェイ(BRKa.N)が出資するBYDは、広告でも大気汚染との闘いを打ち出している。自社の電気自動車「e6」に関するソーシャルメディア上の広告では、Liさんの代理店を訪れた人にはマスクを無料で提供するプロモーションをうたっている。
 

また、BYDの公式ミニブログに掲載されている別の広告では、スモッグのなかで男性が孫悟空に助けを求め、「有害な汚染が引き起こされているのに孫悟空はいないのか」とのキャッチコピーが付いている。

北京汽車(1958.HK)の子会社であり、北京市からも支援を受ける北汽新能源のマーケティングマネジャーは、警報が赤色の一歩手前であるオレンジだった6日、同社のスタッフはマーケティング会社と、大気汚染と結びつけた電気自動車の販促方法を話し合ったと語った。

赤色警報が発令された7日から9日まで、同社では運転手付きの送迎を無料で提供するキャンペーンを行ったという。
 

ただし自動車業界は、問い合わせの増加が実際の販売に結び付くかを判断するには時期尚早だとしている。

CAAMの董揚・常務副会長は10日、電気自動車の販売台数は現在のような強い伸びを維持することは難しく、来年にはペースは減速するとの見通しを示した。

たとえ電気自動車に乗り換えたとしても、汚染の脅威が緩和されるとは限らない。火力発電で供給された電力で電気自動車が再充電される可能性があるからだ。

米カーネギーメロン大学が行った最近の研究では、中国で電気自動車への移行が進んだ場合、石炭火力発電の依存度が高い同国の電力供給網では大気汚染がさらに深刻化する可能性が指摘されている。

中国では現在、石炭を燃料とする火力発電が約75%を占めているが、政府は2020年までにそれを60%まで削減するとしている。(ロイター)

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