20133 軽減税率対象「外食除く生鮮・加工食品」で合意   古沢襄

軽減税率対象をめぐって自民、公明が「外食除く生鮮・加工食品」でようやく合意した。速報するまでもない。

■消費税の軽減税率を巡って、自民・公明両党の幹事長は、焦点となっていた対象品目について、再来年4月の導入時は「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」とすることで合意しました。一方で、必要と見込まれる1兆円の財源は、来年度末まで時間をかけて検討することになりました。

消費税の軽減税率を巡る自民・公明両党の11日の協議では、対象品目について「生鮮食品」に「加工食品」も加えることで一致しましたが、「外食」の取り扱いは結論が出ませんでした。

自民党の谷垣幹事長は12日、麻生副総理兼財務大臣と会談し、「外食」を含めた場合には必要となる財源が1兆3000億円に上ることを踏まえ、財源の確保に理解を求めましたが、麻生副総理は厳しい財政事情を考慮する必要があるとして、容認できないという考えを伝えました。

これを受けて、谷垣氏は12日夜、公明党の井上幹事長らと協議しました。その結果、軽減税率は消費税率を10%に引き上げる再来年4月に導入し、対象品目は「酒類」および「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」として、税率は8%に据え置くことで合意しました。

また、必要と見込まれる1兆円の財源については財政健全化目標を堅持し、安定的な恒久財源の確保に両党が責任を持って対応するとして、来年度末まで時間をかけて検討するとしています。

さらに事業者の納税額を正確に把握するため、税率や税額を記載する請求書、「インボイス」を軽減税率の適用から4年後となる2021年度、平成33年度から導入することでも合意しました。

一方、新聞や書籍への軽減税率の適用について、谷垣氏は「今後、自民・公明両党の税制調査会で議論して詰めてもらう」と述べました。

自民・公明両党では、こうした内容を来週、取りまとめる、来年度の税制改正大綱に盛り込むことにしています。

■自民 谷垣幹事長「現段階で最良の案」

自民党の谷垣幹事長は記者団に対し「両党で精力的に議論を行い、現段階では最もよい案を合意することができたのではないか。対象品目は可能なかぎり幅広く、酒類・外食を除く飲食料品とすることが望ましく、再来年4月に混乱なく導入できるよう政府与党一体となって万全の準備を進めていきたい」と述べました。

また谷垣幹事長は、インドを訪問中の安倍総理大臣に電話し、合意した内容を報告しました。これに対して安倍総理大臣は「ご苦労さまでした」とねぎらいのことばをかけました。

そして、谷垣氏は「これからが大変なので、真剣にやらなければならない」と述べ、再来年4月の導入に向け、政府・与党で全力を挙げて取り組むことで一致しました。

■公明 井上幹事長「財源は責任持って手当てする」

公明党の井上幹事長は記者団に対し、「この間、さまざまな議論があったが、谷垣幹事長はじめ、与党の皆さんの尽力に敬意を表したい。財政健全化目標を堅持したうえで、安定的な恒久財源を確保することについては、与党としてきちっと責任を持って対応したい」と述べました。

■経理やシステム改修の負担増を懸念

自民・公明両党は軽減税率の対象品目について「外食」を除いた、「生鮮食品」と「加工食品」とすることで合意しましたが、小売店など事業者にとっては経理の事務負担が増すことやシステム改修などの準備が間に合うかが懸念材料となります。

消費税は消費者が買い物した際などに支払いますが、実際に税務署に納めるのは事業者です。今は税率が一律なため、事業者は「消費者から受け取った消費税額」から「仕入れ先に支払った消費税額」を単純に差し引けば、納税額を計算できます。

しかし、軽減税率が導入されて税率が複数になると、仕入れた商品一つ一つについて税率ごとに区分して納税額を計算しなくてはならず、経理の事務負担が増えます。

また、商品の取り引きや決済を行うシステムや、店頭のレジが複数の税率に対応できるよう改修するコストに加え、そうした準備が再来年4月までに間に合うのかといったことも懸念材料となります。

これに関連して、麻生副総理兼財務大臣は11日、閣議のあとの会見で税率が複数になった場合の影響について「事業者どうしでは取り引きにすごい手間がかかることになる。物理的な問題として混乱なくやろうとなると極めて難しくそこが一番問題だ」と述べ、懸念を示しました。

■財政健全化に影響も

財務省の試算では、軽減税率の対象品目が「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」とした場合の減収は年間およそ1兆円と見込んでいます。

消費税率の引き上げによる増収分は、平成24年に民主・自民・公明の3党合意で年金、医療、介護、子育てなどの社会保障の財源に充てることが決まり、その使いみちの一つに、消費税率の引き上げに伴う低所得者の負担軽減策として、およそ4000億円が盛りこまれています。

自民・公明両党は軽減税率の導入に伴う減収分として、この財源を充てることにしていますが、それでも6000億円足らないことになります。このため、今後、追加の安定財源をどのようにして捻出するのかが大きな課題となります。

また、先進国で最悪の水準にある財政健全化の観点でも影響が懸念されます。政府は財政健全化に向けて「政策」を実施するために必要な経費を「税収」などでどれだけ賄えているかを示す国と地方を合わせた『基礎的財政収支』を2020年度までに黒字化することを目標に掲げていますが、現時点では軽減税率の導入による影響を加味していません。

政府の試算では、目標達成時期の2020年度でも基礎的財政収支は6兆2000億円の赤字となる見込みで、黒字化を実現するには経済成長による税収の上振れや歳出改革などによる収支の改善が欠かせません。

しかし、軽減税率の対象品目を「外食」を除いた「生鮮食品」と「加工食品」とすると、再来年度以降、年間でおよそ1兆円の税収が減る見込みです。

これに関連して甘利経済再生担当大臣は11日、閣議のあとの会見で、財政健全化目標を堅持するとしたうえで「軽減税率の範囲が決まり、財源がどれだけ必要かに合わせ、財政再建に向けたプランを策定していくことになる」と述べ、軽減税率の導入に必要な財源が拡大すれば、目標達成に向けた計画の内容を見直すこともありうるという考えを示しました。

■海外の軽減税率は

日本の消費税に当たる付加価値税の税率が20%前後のヨーロッパ各国では、ほとんどの国ですでに軽減税率が導入されています。

財務省によりますと、ことし1月時点で例えば、食料品ではイギリスでは付加価値税の標準税率が20%で食料品などの税率はゼロです。

フランスでは標準税率はイギリスと同じ20%ですが、軽減税率は5.5%です。

また、ドイツでは標準税率が19%で、軽減税率が7%などとなっています。

一方、アジアでは、ほとんどの国で軽減税率を導入していません。

軽減税率の対象品目の線引きも国によって異なります。フランスではキャビアは輸入品が多いとして20%の標準税率がかけられるものの、フォアグラやトリュフは国内産業の保護のためとして軽減税率が適用されています。また、酪農家を保護するためにバターは軽減税率が適用されますが、マーガリンは標準税率となっています。

同じ食料品でも、外食サービスとして提供されているのかどうかで適用対象が異なるケースもあります。

ドイツでは同じハンバーガーでも、店内で食べる場合は19%の税率が適用される一方、持ち帰り用の場合は7%の軽減税率が適用されます。

イギリスでは、同じ持ち帰り用の食品でも、フィッシュアンドチップスやハンバーガーなど「温められた」食品の場合は20%の付加価値税が適用される一方で、スーパーで売られている総菜の税率はゼロです。

食料品以外の物でも生活必需品だとして軽減税率の対象とする国もあります。フランスでは新聞や医薬品も軽減税率の対象で、税率は食料品よりも低い2.1%です。イギリスでは子育て世代を支援するため、子ども服の税率がゼロとなっています。(NHK)

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