安倍政権が2012年12月に政権復帰してから26日で丸3年。今年は、世論の賛否が割れる安全保障関連法審議で内閣支持率を一時下げたが、従来の経済重視路線に戻し、再浮揚を果たした。9月の自民党総裁選では無投票再選を果たすなど、「政高党低」が揺らぐ気配はない。
「桃栗(くり)三年柿八年と言いますが、桃と栗は何とか収穫できたのではないか」。安倍晋三首相は25日、首相官邸で記者団に、この3年間の成果に胸を張った。
首相は約1年の短命に終わった第1次政権の反省を踏まえ、世論の関心が高い経済に注力してきた。先の通常国会では集団的自衛権行使を可能とする安保法審議で、世論を背景とした野党の攻勢を受けたが、政府・与党が結束して成立まで突き進んだ。成立後は希望出生率1.8などアベノミクス「新3本の矢」を新たに掲げ、経済最優先の姿勢を再び鮮明にした。
自民党内の族議員の反発が予想された環太平洋連携協定(TPP)では、有力農林族を党のまとめ役に据え、大筋合意後は小泉進次郎氏を農林部会長に起用し、国内対策を取りまとめるなどして乗り切った。
官邸と自民党の力関係が如実に表れたのが消費税の軽減税率をめぐる調整だった。「安倍官邸」はこれまで聖域とされた自民党税制調査会に介入。税調会長を交代させ、軽減税率導入に慎重な党側を押し切った。
一方、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題は法廷闘争に発展。安倍政権は沖縄振興も推進する姿勢をアピールしているが、県民からは「アメとムチ」に映る。
◇近隣外交に課題
注目された「戦後70年談話」で、首相は中国や韓国の反発を考慮し、過去の首相談話に明記された「植民地支配」や「侵略」などのキーワードを盛り込んだ。こうしたことが奏功し、首相と朴槿恵韓国大統領による初めての会談も実現した。
ただ、近隣外交は関係改善の兆しが見えてきたものの、中国とは沖縄・尖閣諸島をめぐる対立、韓国とはいわゆる従軍慰安婦問題を抱えており、今後も難しいかじ取りが続きそうだ。政権が最重要課題とする北朝鮮の拉致問題は再調査の結果報告が遅れ、こう着状態に陥っている。
◇安倍首相語録
「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この3本の矢で経済政策を力強く進める」(2012年12月26日、政権発足後の記者会見)
「憲法改正に向けて頑張っていく。これが私の歴史的な使命だ」(2013年8月12日、山口県長門市の自身の後援会会合で)
「二度と再び、戦争の惨禍によって人々の苦しむことのない時代を創るとの決意を込めて不戦の誓いをした」(12月26日、靖国神社参拝後記者団に)
「最高責任者は私だ。選挙で国民から審判を受けるのは、法制局長官ではない」(2014年2月12日、衆院予算委員会)
「戦略的互恵関係の原点に立ち戻り、関係を改善させる第一歩になった」(11月10日、日中首脳会談後記者団に)
「衆院を解散した。この解散は『アベノミクス解散』だ。アベノミクスを前に進めるか、止めてしまうかを問う選挙だ」(同21日、記者会見)
「わが軍の透明性を上げていくことについては大きな成果を上げている」(2015年3月20日、参院予算委員会)
「早く質問しろよ」(5月28日、衆院平和安全法制特別委員会でやじ)
「先の大戦での行いに対するおわびの気持ちは、戦後の内閣が一貫して持ち続けてきた。私の内閣でも揺るぎないものとして引き継ぐ」(8月14日、戦後70年談話発表の記者会見)
「戦争を未然に防ぐためのものだ。積極的な平和外交を推進し、万が一への備えに万全を期していきたい」(9月19日、安全保障関連法成立受けて記者団に)
「アベノミクスは第2ステージに移る。1億総活躍社会を目指す」(同24日、自民党総裁再選受けて記者会見)
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