■「ピルグリムファーザーズ」って、犯罪者か、契約移民だった 日本でキリスト教を普及させようと思ったら『日本のほうが徳目が高かった』
<日下公人、高山正之『世界は邪悪に満ちている だが、日本は・・・・』(ワック)>
世界は邪悪に満ちているのなら、この本は正義に満ちている?
ともかく異論をとなえはじめるや他の追随を許さない双璧が対談すると、波乱含みの発言に満ちあふれ、しかも日本のメディアがまったく報道しない、あるいはこうした視点から分析しないイシューを多角的に論じ合うわけだから面白くない筈がない。
一気に読むのがもったいないので、四回ほどにわけて列車や飛行機のなかで読んだ。
途中、おもわず膝を打ったり、うなったり、なるほど、そうだったのかと疑問が氷解した箇所もあれば、目から鱗が落ちた記述も多かった。
アメリカ批判を高山さんが口火を切った。
高山 「(アメリカで)「黒人問題は終わったと言えるのか。げんに黒人が街角で射殺されたり、黒人の失業率が高止まりしている。『黒人奴隷制は終わった問題だ』と言っているけど、実際には終わっていませんよ。過去の問題と言っているけどまったく違う。それなのに平気で他国のことを言う(鯨を捕る日本が悪いとか)」
つまり、かれらのやり方とは「論理がないから、威圧で押さえ込む」のである。
日下 『アメリカに渡ったピルグリムファーザーたちは、だいたいが犯罪者なんです。『刑務所からだしてやるから、アメリカに行って開拓でもしていろ』と言われて追い出されてきたような人たち。彼らは、知らない土地に追い出されたから、『神の恩寵がある』とでも思っていなければ生きていけなかった。それで彼らは『信仰の自由』という格好いいことを言い出した』。
そのあとに続いた移民も「契約移民が多い。アメリカに行くといっても船賃も払えない貧乏な人たちだから、アメリカに着いたら船賃分だけ働いて、働き終わったら用済みになる」
つまり棄民だった。豪州の最初に移民は新しい流刑地だったように。
この契約がアメリカの教会経営にも生きた。教会が廃れると教会さえが売り買いの対象となる。野心的な企業家が教会を買いたたき、あたかもビジネスのように寄付を集めて経営するのだ。
信者を増やすために、富裕層からカネをあつめる。だから日下氏は次のように比喩する。「アメリカの教会はそんなにありがたいものじゃない。やりかたはフランチャイズのハンバーガーチェーンと同じやり方なんです」
したがって日本でも同様に一等地にキリスト教系の大学をじゃんじゃん建てて、効率的な普及をしようと思ったら、
「日本のほうが徳目が高かった」(高山)ので、いまもってキリスト教は日本では普遍化しないというわけだ。
随所で語られる意外な真実に、アメリカ文化を崇拝している人が読むと卒倒するような内容となっている。
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