20265 春節前に5900億元(11兆2000億円強)の資金供給   宮崎正広

■それでも中国人民銀行総裁の周小川の沈黙(雲隠れ)が続いている

中国人民銀行は1月26日と28日に公開市場操作(オペ)を通じて、実質的に5900億元の資金をばらまいた。

邦貨換算で11兆2000億円の大盤振る舞い、剛胆ですらある。

2月7日からの春節(旧正月)を前に、資金需要の活発化に対応するため、年初来、人民銀行のオペは五回にわけて行われた。こうして資金供給が肥大化すれば、通貨価値が下がる。連動して株も下落する。

先週、香港とマカオを取材したが、爆買いの象徴だった「周大福」(それこそ50メートルおきに一軒、宝飾品、ダイヤモンド、金のコイン)、「周生生」、そして「六福」の何れもがらんと客足がなかった。

マカオの博打場は往年の三分の一、火の消えた静けさだった。そう、火の消えた静けさを続ける男がもう一人、いる。

こうした重要な時期に、なぜか「ミスター元」と国際的にいわれる周小川総裁が沈黙し続けるのか。周は中国人民銀行総裁ポストに14年間も在職しており、その影響力は計り知れないばかりか、従来は重大な政策決定にともなって公式の場で何回も説明を果たしてきた人物ではないか。

その周小川は公式な発言を回避し続けている。テレビにも出演せず、国際会議にも出なくなった。ダボス会議に欠席した。

15年8月11日の人民元切り下げ直後の記者会見でも副総裁を出席させ、自らは発言を控えた。

つまり数ヶ月も周小川は公式発言から逃げているのだ。ラガルドIMF専務理事らは「大事なときに細かなコミュニケーションの取れない中国銀行だ」と批判的である。

消息筋に拠れば、中国の中央銀行は名ばかりであり、実際の政策決定は周小川ら国際的金融システムを理解しているテクノクラートの進言、助言を無視して、習近平の「政治的判断」で決まる。

すなわち歴史解釈と同じように経済政策は政治に縦続する。

テクノクラートの限界であり、現在の中国経済の沈降、停滞、クラッシュを前にして、責任を取らされては叶わないという自責と、中国経済失速後に批判の標的として犠牲の山羊にもされかない政治的環境から、慎重にリスクを判断し、公的発言を忌避しているのだろう、とする。
 

であれば、次の人民元切り下げは誰が最終判定をするのだろう? まさか市場に任せる? 

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