20286 氷見の寒ブリ 魚津のホタルイカ   古沢襄

氷見の寒ブリが不漁だという。40年以上も昔の話だが、氷見ロータリー・クラブに頼まれて政局の講演をしたことがある。

氷見に向かう車中でカーラジオから流れる今太閤・田中角栄の景気のいい話を聞きながら「さて、何を話そうか」と迷った。

つい三ヶ月前までは東京にいて角福戦争をみていたので、「福田赳夫さんはどうしているのかなあ」という思いに駆られていた。

ロータリの話は「氷見のイワシのことはよく聞かせられいた」と場違いな切り出しで始めた。当時は氷見の寒ブリよりも、氷見のイワシの方が知られていた。

寒ブリはむしろ富山の寒ブリ。富山市内の店で寒ブリ料理を堪能していたから、出世魚のブリは「フクラギ → アオブリ → ハナジロ → ブリ」と知っていた。日本海の荒波にもまれたフクラギの刺身ほど美味しいものはない。

北陸には5年間いたので寒ブリの味はよく知っている。東京に戻ってブリの刺身が北陸でみた姿と違って、脂がのり過ぎてクッタリしているのに、しばらくは馴染めなかった。

魚の味はやはり日本海ものがいい。それも冬ものがいい。寿司も夏場のものよりは、冬物がいい。

富山には一年半しかいなかったが、福田さんは二回来てくれた。二人の娘を連れて空港まで出迎えた日々が懐かしい。

群馬県出身の福田さんに「魚は日本海ものがいい」と力説したのが「ほお・・」といってさして関心を示さなかった。魚よりも蕎麦の方に関心があったのだろう。

東京にいる時は魚よりも朝鮮料理、それも朝鮮焼肉にはまっていた。それが富山では朝鮮焼肉の店がみつからない。四〇数年前の話である。

富山県庁の近くに「弁慶」という名の魚料理を食べさせてくれる店があった。そこで昼に出された魚津のホタルイカの味が忘れられない。魚津出身の編集局長氏が連れていってくれた。

魚津で朝とったホタルイカを昼に富山市内で酢味噌で食べるのだが、脂がのっていてまさに絶品。東京でもホタルイカをみかけるが、朝とったものを昼食べるわけにはいかない。

魚料理は、やはり地場ものを地場で食べるのがいい。

<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

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