■逆ギレした中国の狂乱ぶり
2015年の中国経済に関する当局の統計数字が1月中にほぼ出そろった。それらのデータに基づいて、過去1年の中国経済の実態を探ってみよう。
政府公表の15年の経済成長率は6・9%。1990年以来25年ぶりの低水準だが、問題は、この低水準の成長率でさえ、かなりの水増しがあろうと思われることである。経済の実態をより適切に反映できる「李克強指数」の2つ、「電力消費量の伸び率」と「鉄道貨物運送量の伸び率」をみると、15年、前者は0・5%増にとどまっており、後者に至っては11・9%減だ。
ならば、経済全体の成長率が6・9%もあるはずはない。もう一つ、対外貿易の関連数字を見てみると、真実はより明確になってくる。
15年の中国の対外貿易総額は8%減。そのうち、海外からの輸入総額は14年と比べて14・1%も減少した。海外からの輸入は当然、消費財と生産財の両方を含んでいる。輸入総額が14%以上も減ったことは、中国国内の生産と消費の両方が急速に冷え込んでいることを反映している。
そして28日、人民日報は1面で署名記事を掲載し、ソロス発言に反論すると同時に、「中国経済は絶対ハードランディングしない」と宣した。29日、人民日報海外版も再度ソロス発言への批判記事を掲載したが、その中で「でたらめ」という罵倒までをソロス氏に浴びせた。
それでも気が済まないのか、今月3日、今度は国家発展改革委員会の徐紹史主任(閣僚級)が登場して、ソロス氏の「中国経済ハードランディング論」を徹底的に批判した。
このように、外国の一民間人の発言に対し、中国政府は国家の中核メディアと政府高官を総動員して、いわば「人民裁判式」のすさまじい批判キャンペーンを展開した。
その中で、共産党機関紙の人民日報までが、執拗(しつよう)にも「でたらめ」などのひどい言葉を持ち出して外国人の投資家に投げつけてきたのである。
このような恥も外聞もない「狂乱ぶり」は逆に、ソロス氏の「中国経済ハードランディング発言」が、中国政府の痛いところをついた証拠であろう。中国政府自身もソロス氏発言が真実だ、と分かっているからこそ、必死になってそれを打ち消そうとしているのだ。
そして28日、人民日報は1面で署名記事を掲載し、ソロス発言に反論すると同時に、「中国経済は絶対ハードランディングしない」と宣した。29日、人民日報海外版も再度ソロス発言への批判記事を掲載したが、その中で「でたらめ」という罵倒までをソロス氏に浴びせた。
言ってみれば、ソロス氏への「人民裁判」の背後にあるのは、まさに中国経済の絶望的な状況である。ソロス氏をいじめただけでは状況は何一つ変わらない。
【プロフィル】石平 せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得
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