■「見切り発車」に追い込まれた理由とは…「国家の恥」という声も
韓国の仁川国際空港と付近を結ぶ低速リニアモーターカーが、3日の運転開始からわずか8分後に急ブレーキで運行停止するトラブルに見舞われた。
2012年に完成したものの、その後のチェックで500件超の問題が見つかり5年あまりも営業運転ができなかった、といういわくつきの韓国版リニアだけに、現地メディアは「予想された『恥さらし』」と報じた。開通前に「日本に次いで世界で2番目」とアピールしていた韓国の威信も、文字通り“地に落ちた”形だ。
■ネット民は辛辣「国費のムダ」
「列車と線路がぶつかった衝撃で、乗客が車体の片方に押し寄せてしまったため、列車周辺では相当な煙があがった」
韓国・東亜日報は4日、韓国リニアのトラブルの模様をこう報じ、「8分でストップ…第一歩から“ガタガタ”」との見出しで痛烈に批判した。
同様に韓国KBSニュースは「磁気浮上列車の故障…予見された『恥』」と報じたほか、聯合ニュースも「仁川空港磁気浮上列車 開通初日に停止し『恥』」と批判した。
問題となった急停止が生じたのは、開通記念行事で出発した最初の列車だ。
韓国国土交通省によると、行事の進行を早める都合で一部の駅に停車せず通過したところ、龍遊駅まで約300メートルの地点で車体が線路の上に落ちて急停止した。制限速度の時速35キロを3キロ上回ったため、緊急ブレーキがかかったという。
韓国国交省は、運行システムで設定した通りに安全装置が作動した結果であり、車両の故障や事故ではないと主張。記念行事で運行して以降、「1日に47回運行したが他の障害は発生しなかった」と釈明し、3日の営業運転終了後に「速度制御プログラムを補正した」と述べた。
だが、その日夕には乗客がドアに挟まれるトラブルも発生していた。ブリッジ経済新聞が4日報じた。どちらも人命に関わる問題ではなかったが、ネット掲示板では「国の恥であり、国費の無駄である」「もっと慎重かつ徹底的な修正をしてくれ」と厳しい声が相次いだ。
■3年がかりの修正も…最後は弥縫策?
問題の韓国リニアは12年11月に第一期区間6.1キロの工事を終えたものの、国交省と鉄道施設公団などが行った点検で速度検出センサーのエラーや、車両と信号間の伝達エラーなど585件の欠陥が発見され、営業運転開始を延期。
その後、3年かけて564件の欠陥を修正したものの、昨年12月時点では20件程度の問題が改善されないまま残っていたという。
開発にあたった現代ロテムなどは、3日の営業運転開始までにすべての欠陥は修正したと説明。ただ、最後まで問題だった、強風が吹くと車体とレールの間隔が基準値以下になる「浮上着地現象」については、強風時の運行中止基準を風速20メートルから風速15メートルに引き下げて問題なしと判断した。
また、変電設備の問題による「電流遮断」については、電圧従来の450ボルトから600ボルトにして解決するなど、対策にはやや弥縫策のきらいもある。
KBSニュースは3日、韓国リニアが風速17メートル以上の強風時における走行テストは行わないままだったと報じた。風速17メートルは台風並みの強い風だが、年間平均12日程度は発生するという。運行中止の基準を引き下げたからといって、突発的な風に対応できるのかは疑問が残る。
■中国より先に…見切り発車
“見切り発車”のような営業運転開始に踏み切った理由として、現地メディアからは、中国に先を越されることを恐れたのではないか、との指摘もなされる。韓国のネット系経済紙マネートゥデイは、「世界2番目の都市型磁気浮上列車というタイトルのために、開業を急いだのではないかとの批判が一部では出ている」と報じた。
実際、中国・人民網は昨年12月、中国の旧正月にあたる16年の春節(2月8日)にも、湖南省で都市型低速リニアの商業運転を行うと報じている。
中国に営業運転開始で先を越された場合、日本に次いで世界2番目の実用化という「金看板」を失う。そうなれば、韓国が開発当初からもくろんでいた、リニア技術の海外輸出に影響する…という計算が働いた可能性も否定できない。その結果、公共交通機関に最も必要な信頼性を損なったとすれば、本末転倒というしかない。(産経)
<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>
コメント