■「トランプは『最初の百日間』に何をするか」のシナリオを提示
「最初の百日」というのはアメリカの不文律で、大統領就任式から百日間は大統領を攻撃しないで、出だしを観察する。
メディアと行政トップとの蜜月でもある。
英紙『ガーディアン』(2016年2月25日)は、早々とトランプ政権の誕生を予測し、その陣容と政策とを「トランピズム」と銘銘している。(チト気が早いのでは?)
11月8日の大統領選挙本番で、民主党候補をトランプが破り、大統領になる可能性はもはや「決して低いとは言えない」と同紙は書き出し、もしトランプ政権が誕生した場合、1月20日の就任式以後、かれは何から先に手を付けるかという予測記事を掲げた。
まずは最高裁判事の人事である。
保守穏健派のスカリア判事が急死のあと、欠員をオバマはリベラル派から撰ぼうとしているが議会の反対は目に見えており、新政権までもたつく。
したがって、トランプは最初に保守主流から最高裁判事を選ぶだろう。トランプは選挙前にも「中絶に反対」の立場をとっており、リベラルな思想には対決的である。
ついで政権を固める人事だが、トランプはルビオやクルーズを閣僚に取り入れる可能性もあり、ベテラン政治家をホワイトハウスに配置するだろう。それは彼が『私は政治家ではない。だから政治家が必要だ』と繰り返しているように、周囲を政策通のベテランで固め、政権運営を円滑化させるだろう。
さて難民問題、不法移民に対してどうでるか。
オバマは屡々議会の反対を飛び越えて、大統領命令で政策を強引に実行しようとして、結局は議会の猛烈な反対でいくつかのオバマケアは潰されてしまった。
トランプも時と場合によっては大統領命令で議会の意向を無視する行為に出るかも知れないが、難民問題、不法移民は米国に1400万人も存在しており、すでに既得権益でもあり、強力なロビィ集団があって短時日には解決できない。
外交ではイランと中国へいかに出るか。
イランとの核合意、制裁解除についてトランプは反対の立場を明確にしており、イランとの再交渉が考えられる。
中国とは貿易摩擦を目の前に、トランプは盛んに「私が大統領になったら初日に中国を『為替操作国』と認定する」と発言してきた。
南シナ海の係争に関して目立った発言はないが、「偉大なアメリカを再現する」と叫んでいる以上、オバマ政権のような微温的態度では臨まないだろう。
またロシア、シリア、北朝鮮など強硬姿勢をくりだすものの中味は曖昧であり、トランプは「個人的にプーチンとは馬が合う」と言ってみたり、オバマのキューバへの急激な傾斜へも取り立てての反論をしていない。
問題はグアンタナモ基地返還に待ったを掛けるだろう。
イスラム排撃は、ポピュリズムの極端なアピールだが、そもそも移民の連邦国家がアメリカであって、WASP主流という考え方はもはやない。たとえトランプ好みの最高裁判所人事がなろうとも、イスラム排撃などという極端な政策は実行不可能であり、そのことはトランプ自身がよく認識している筈だ。
以上のシナリオを英紙が描いているわけだが、問題はトランプの勝利を、米国の政治通ばかりか朋友英国のメディアも深刻に認識し始めたというポイントにこそ注目するべきだろう。
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