■乏しい危機感に警鐘
北朝鮮のミサイル開発をめぐっては、米国本土を襲う「長射程化」に目を奪われがちだが、日本にとって最大の脅威は、今回発射された中距離弾道ミサイル「ノドン」の存在に他ならない。
ノドンの射程は約1300キロと分析され、日本の主要都市や米軍基地を含むほぼ全域が射程内に入るためだ。北朝鮮は今回の発射によって性能向上のための膨大なデータを入手したとみられる。
「わが国の領域、周辺海域に到達しうる弾道ミサイル能力の増強につながるものであれば、安全保障上、強く懸念すべきものだ」
中谷元(げん)防衛相は18日の記者会見で、北朝鮮のミサイル開発に警戒感をあらわにした。
この背景には、北朝鮮が弾道ミサイルの大気圏内再突入に必要な技術開発や、搭載可能な核弾頭の小型化を急速に進め、日本に対する核ミサイル攻撃の脅威が極めて大きくなっていることがある。また、北朝鮮は移動式発射台(TEL)を使い、ミサイル発射を事前に探知されにくい奇襲的攻撃能力も手に入れている。
この軍事的脅威が眼前に迫っても、野党は相変わらずだった。
18日の参院予算委員会で、共産党の井上哲士氏は安全保障関連法を「戦争法」と呼び、首相に対し、同法の国会審議で公述人が「安倍内閣の積極的平和主義は軍事を社会の中心にという考え方に限りなく近づいている」と述べたことの感想を求めた。
これに首相は「認識は間違っている」と断じ、安全保障関連法によって「日米同盟をより絆を強化することで抑止力を高め、日本人の命や平和な暮らしを守り抜いていくことに資する」とはねつけた。
日本のミサイル防衛(MD)システムは、海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の2段階だ。
これに地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」を導入する動きもある。
だが、撃ち漏らしたり、迎撃能力を超える「飽和攻撃」を仕掛けられたりする危険性は排除できない。そのため、事前にミサイル発射施設をたたく「敵基地攻撃」がこれまで議論されてきた。
敵基地攻撃は自衛の措置として憲法解釈上も認められている。
「座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない」(昭和31年2月の政府見解)からだ。
だが、日本はいまだに必要な攻撃能力を有していない。国内外の反発を恐れ、自衛の準備を怠ってきた戦後日本政治のツケだが、その高い代償を払わされるのは生命と財産を脅かされる日本国民だ。
「ミサイル発射に『またか』と慣れてしまうのが一番こわい」。自衛隊関係者は日本に巣くう“平和ボケ”に警鐘を鳴らす。
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