20583 アングル:中国消費者の節約志向が招く「修羅場」   ロイター

[上海/香港 16日 ロイター]中国では、消費者が財布のひもを締めるにつれ、小売業者は人員を削減し、事業拡大計画を遅らせ、在庫を積み上げている。経済成長の原動力として消費者に期待していた同国にとって、大きな悩みの種となっている。

経済成長が四半世紀ぶりの水準に鈍化するなか、中国の消費パターンには変化が見られる。裕福な中間層は高級志向から、より手ごろなブランドへと移行し、貧困層は生活必需品すら切り詰めている。

中国小売業者の上位50社は今年初め、売り上げが6%減少。米調査会社カンター・ワールドパネルによると、即席めんや洗剤といった日用品の売り上げは昨年末、わずか1.8%の増加にとどまった。3年前の9%超増と比べると大幅に伸びが低下している。

とりわけ安価な日用品の消費でさえ低迷していることが、中国の抱える難題を如実に表している。

「以前だったら、欲しいものがあれば買いに行った。だけど今は本当に必要なものしか買わない」と、上海の国有企業で働き、月収1万─1万5000元(約17万4000─26万1000円)を稼ぐというYang Shunjieさん(28)は語る。価格の安いインターネットで買い物をすることが多く、新しい服を買う場合はシーズン終わりのセールまで待つという。

小売だけでなく、中国の持続的成長に頼っている高級品やファストフードチェーンなど多くの外資系企業にとって、こうした状況は問題となる。

おむつのパンパースなどを同国で販売する米家庭用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)(PG.N)は1月、売り上げが2014年と比べて「著しく低下」したと発表。また、乳幼児向け栄養食品の米ミード・ジョンソン・ニュートリション(MJN.N)は、価格競争と、より小規模な店舗やオンラインでの購入に消費の場が移行していることが売り上げを直撃したとしている。

「小売りに変化が起きている。高級品の売り上げは過去数年、非常に良かったが、それも終わりを迎えつつある。嗜好が変わってきている」と、キャピタル・エコノミクス(ロンドン)のアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は指摘した。

 
豪ウエストパック銀行による最近の消費者調査では、消費者のセンチメントは昨年10月以降で最も低かった。「2月の最新データは、引き続き弱い状況を示しており、失業懸念の高まりが再び消費者のムードに重くのしかかっている」と、同銀のシニアエコノミスト、マシュー・ハッサン氏は語った。
 

ハッサン氏はまた、消費者需要が勢いを失えば、成長がさらに長く低迷するリスクが高まると指摘した。

<生存競争>

一方、一部の企業はそのような消費低迷をものともしない。

米コーヒーチェーン大手のスターバックス(SBUX.O)、スポーツウエア大手のナイキ(NKE.N)やアディダス(ADSGn.DE)のような「手ごろなぜいたく」を提供する国際的なブランドは依然として業績を伸ばし続けている。アディダスは同社のビジネスに対する影響は見られないとし、2020年末までに中国で新たに約3000店舗を展開する計画だ。

しかし、中国の景気減速は小売業に打撃を与え、多くの企業は事業の縮小や成長著しい小都市への重点的な取り組み、さらなる値引きを余儀なくされていると、業界幹部や消費財メーカーは指摘する。
 

「消費の場がオンラインや小さな店に移るなか、対応に苦慮している」と、ある外資系大手消費財メーカーの販売担当幹部は語る。「修羅場に直面している」と同幹部は言う。

この幹部の話では、一部の小売業者の在庫水準は、通常の平均である約2週間分から9カ月分にまで急増したという。

このことは、小売業者と消費財メーカーの双方にとって、宣伝方法を再検討する必要があることを意味している。中国に拠点を置く広告会社の幹部によれば、一部の企業は二重のマーケティング戦略を採用しているという。富裕層をターゲットとする高級な外国製品を展開すると同時に、人気があり価格が手ごろな中国ブランドを買収することだ。

英日用品メーカーのレキット・ベンキーザー(RB.L)の最高経営責任者(CEO)は先月、中国企業の買収により同国で販売する喉の痛みに効く市販薬は「ローカルヒーロー」だと語った。
 

<警告のサイン>

すでに今年、弱い消費者需要のせいで、中国に重点を置く消費財メーカーの業績は大幅な下方修正を迫られている。

即席めん・飲料大手の康師傅(0322.HK)、スーパーチェーンの聯華超市(0980.HK)、中国服飾(1146.HK)、民生珠宝(1466.HK)などの企業は、売り上げ低迷について「落ち込む消費」と値下げ予想のせいだとしている。

「今年はかんばしくない。実際のところ、これまで売り上げは伸び悩んでいる」と、上海の雑貨チェーン「エンジョイ・イージー」の店員は語る。昨年は、顧客1訪問当たり100─200元(約15─30ドル)を売り上げていたが、今年はそれよりかなり少ないとし、「今ではわずか数ドルしか使わない人もいる」という。

大型スーパー運営大手「高キン零售」は先月、2016年は小売業者にとって「厳しい年」になるだろうと説明。同社の2015年利益は16%減少した。

低迷は、本土からの訪問者の需要に大きく依存しがちな香港にも広がっている。香港の小売売上高は昨年、13年ぶりの低水準を記録。今年も減少が続いている。

「われわれの大半が(2月に)2桁の売り上げ減を経験した」と、香港零售管理協会の鄭偉雄・会長は今月、電話会議で述べた。多くの小売業者が経営を維持するために人員を削減しているとし、「皆、状況を非常に憂慮している」と語った。

    
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