20706 【社説】パナマ文書が提供する視点   ウオールストリートジャーナル

3日に「パナマ文書」と呼ばれる文書が流出したことで、世界の富豪や有力者が秘密にしてきた金融取引が暴露された。その中には汚職が疑われるケースもある。

この文書は、ドイツの南ドイツ新聞に流出した。同紙は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)などと協力してこの文書を精査した。

それらは法律事務所「モサック・フォンセカ」の取引を文書にしたものだとされる。モサック・フォンセカは富裕な依頼人がパナマにペーパーカンパニーを設立する手助けをしていたようだ。パナマはいまだに銀行をめぐる機密のとりでになっている。

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を含む他のメディアは何年にもわたり、この文書で言及されている個人および家族の一部について、資産の源やその大きさを調査してきた。

しかし、今回流出した文書は、世界的な資金の流れに関し異例なほど広範囲にわたる視点を提供するものであり、また新たな実態を浮かび上がらせる可能性がある。

そのスケールは目を見張るほどだ。ICIJはこの文書に関するリポートで、ロシアのプーチン大統領の長年の友人および仲間が、何年かの間に20億ドル(約2200億円)の資金をパナマに向かわせていたと指摘した。

ロシア大統領府の報道官はこのリポートについて「プーチン嫌い」をあらわにした文書だと指摘した。

中国の習近平国家主席の家族のほか、サウジアラビアの国王やマレーシアのナジブ首相の息子もパナマとの関連を疑われた。習主席の義兄弟とサウジ政府はICIJへのコメントを拒否した。ナジブ首相の息子はICIJに対し、「国際的なビジネス」のためにパナマの企業を使ったと話した。

この文書には、一部の西側諸国の指導者に関する言及もある。アイスランドのグンロイグソン首相、英議会の元議員数人やキャメロン首相の亡父などだ。ICIJは、入手した記録対象の過去40年近くの間に、各国指導者および政治家ざっと140人と、その他何百人に上る可能性のある個人がパナマで会社を設立していた証拠が見つかったと指摘している。

ある個人がパナマにそのような企業を設立したとか、パナマで銀行口座を開設したという事実が不正行為の証拠になるわけではなく、文書内で言及されている人の中には、パナマでのプレゼンスを正当化する、合法的なビジネス取引があると述べている人もいる。

法律事務所のモサック・フォンセカは、「違法行為を助長していないし、促してもいない」と返答している。刑事責任があるかを判断するためには、その分析にICIJやそのパートナーが費やしたよりさらに長い時間を費やす必要があろう。

今回の暴露は、富裕層がパナマの銀行機密法を使っていかに簡単に資産を「隠す」のかを浮き彫りにする。ICIJは、昨年海外の租税回避地を問題視する本を出版したガブリエル・ザックマン氏にコメントを求めた。これに対し同氏は、「文書は、海外で行われている違法な犯罪行為がいかに根深いものとなっているかを示している」と述べた。

経済協力開発機構(OCED)は、パナマを「最後の究極の租税回避地」と評し、こうした報告により、パナマが銀行機密法を廃止せざるをえなくなることを期待しているのは間違いない。オーストラリアやドイツ、英国などは、パナマ文書で指摘された個人が税逃れを行っているのかどうかすでに調査に入っているか、調査する意向を表明している。

各国政府は税法を適用する必要がある。だが、パナマの企業に関係している人たちが適正な税額を支払っているのかどうかが、どの程度の大きな問題なのか判断するのは難しい。それ以上にはるかに重要な問題は、いかに多くの国の多くの政府当局者が多額の資金を首尾よく蓄えているかである。

パナマ文書では、非民主的で不透明な国の要人が目につくのは驚きではない。今回の暴露は、そうした国のわずかな裕福な権力者がいかに資産を分散しているかについて新たな知見を提供する。

西側各国政府は、資金移転の一部は非民主的で不透明な国に対する西側の制裁をかいくぐることを狙ったものだとICIJが指摘していることに特に注意すべきだ。ロシアや中国の市民は、自国の指導者の資産についてもっと知るべきである。

こうした問題点は、世界中の報道界や有権者、さらには裁判でさらに掘り下げられるべきである。拙速に政治家の十八番である税逃れに焦点を絞り込むのは間違いである。本当のニュースは政治家の収入であり、広範な銀行口座である。

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