■誘発を警戒 「近代観測史上、聞いたことがない」
熊本県で相次ぐ地震は、16日未明にマグニチュード(M)7・3の地震が起きて以降、阿蘇地方や大分県などの北東側へ活動域を延ばして活発化している。これほど広域に及ぶ「地震の連鎖」は異例のケースで、専門家は誘発の拡大を警戒している。
熊本県中部には、14日に熊本地震が起きた日奈久(ひなぐ)断層帯と、その北にある布田川(ふたがわ)断層帯が北東-南西方向に走っている。一連の地震は当初、この2つの断層帯付近で発生したが、16日未明になって“飛び火”するように北東側の阿蘇地方で地震が相次いだ。
さらに大分県の別府-万年山(はねやま)断層帯付近でも地震活動が活発化。これらの震源は布田川断層帯の北東の延長線上に帯状に連なる。
気象庁の青木元・地震津波監視課長は「熊本地震が何らかの影響を及ぼした可能性がある。ここまで広範囲に及ぶ地震は近代観測史上、聞いたことがない」と驚きを隠さない。
地震はなぜ北東に広がったのか。東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は阿蘇地方が火山地域であることを理由に挙げる。
「地下には亀裂がたくさんあり、16日未明の地震を機にひずみが伝わり、反応する断層が出た」。隣接する断層で地震が連鎖した例は過去にもあるが、「これだけ広域に多発するとは思っていなかった」と明かす。
名古屋大の山岡耕春教授(地震学)は「大分県は別府市などに温泉がある地熱地帯。地盤がひずみに敏感なため揺れたとみられる」と指摘する。
日奈久、布田川断層帯は九州中部を東西に延びる「別府・島原地溝帯」という溝状の地形の南縁に位置する。遠田氏は「地溝帯の全域にわたって地震が起きやすい状況になっている」と警鐘を鳴らす。
震源の拡大はどこまで続くのか。山岡氏は「大分県の地震は規模が小さいため、さらに東に延びることはない」とみるが、東北大の長谷川昭名誉教授(地震学)は「地溝帯に沿って離れた場所で地震が起き始めている。大分県などでさらに誘発されて地震が起きる恐れがある」と指摘した。
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