20846 落下傘兵のように飛ぶタンポポの花   古沢襄

庭に黄色いタンポポの花が咲いている。犬の散歩で見かけないタンポポ。どこから飛んできたのか。

タンポポには少年時代の想い出が詰まっている。信州に疎開して農家の勤労動員に行った。ヤギの乳をご馳走になったり、大きな白米のおにぎりも食べることが出来た。

そんな時にあぜ道に芽を出した野蒜(のびる ネギの一種)を摘んだり、イナゴを追いかけてつかまえ家に持ち帰って母が即席のふりかけ粉を作って貰った。タンポポの花は日陰干しにしていた。

それを実家の伯父はキセルに詰めて吸っていた。「からいけどなあー」と言いながら・・。タバコ葉は戦地に送られ、兵隊さんの必需品。たしか「ほまれ」という名がついていた。

母はタンポポの葉を乾燥させて、お茶の代わりにしていた。お茶好きの母だったが、タンポポ葉のお茶を作ってもあまり飲まない。

タンポポを摘んでくると「野蒜の方がいいよ」と母から言われた。野蒜は野趣があって、酢味噌であえると、いまでも酒のつまみになる。

タンポポの花は咲くと、風に吹かれて落下傘兵のように空に飛ぶ。初夏の風景。

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