20852 粗食で八十四歳まで長生き   古沢襄

未明の三時半に起きて”飯炊き”と言ったら笑われそうだが、このところロクなものを食べていない。さすがに腹が減って堪らないので未明の飯炊きになった。

と言っても冷蔵庫を開けてもロクなものがないので、ネギをたっぷり刻んで納豆飯でも食べようかと思っている。

長年の経験で腹が減って堪らない”症状?”は健康の証拠。納豆飯で症状が治まるのだからこれほど安い治療法はない。

それもこれも「粗衣粗食」で父母に育てられたからであろう。いまの若い世代は贅沢な飽食に慣れている。

父とともに作家修業に励んでいた母は食事作りに時間を費やす気がなかった。二日分の飯を炊いておひつに入れた。夏などは二日目になるとおひつのご飯がすえた匂いがする。

「ご飯が臭うよ」と小学生が抗議すると、少し鼻をつけて「臭わないよ」と却下。「臭うならお湯で流してから食べなさい。男が食べ物のことで言うものではない」と怖い顔をする。

自然と粗食が身についた。

いまになって贅沢な飽食で育てられなかったのに感謝している。それで骨髄腫という厄介な病気を抱えながら八十四歳まで長生きをしている。

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