20885 革新的技術はことごとく他国へ、「先見の明」がない韓国   韓国・朝鮮日報

今年2月、サムスン電子は「『3次元半導体(FinFET)』技術をベースにしたモバイル用半導体の量産に成功した」と発表し「半導体の構造的限界を克服した技術的な成功」と自画自賛した。3次元の技術を導入した半導体は、従来の平面構造の製品に比べ、性能とエネルギー効率がはるかに優れている上、チップのサイズも極小化することができる。

この半導体を利用すればサムスンのスマートフォンはさらに薄くなり、バッテリーの持続時間も飛躍的に伸びる。サムスンの新技術はそれほど画期的な技術なのだ。しかしこの時点で、サムスンのFinFET半導体の生産はライバル社のインテルより4年遅れていた。

実はサムスン電子はかなり前に、この技術を他社に先駆けて占有するチャンスがあった。15年前の2001年10月、イ・ジョンホ円光大教授(当時)が京畿道器興にあるサムスンの半導体事業所を訪れ、自身の開発した「3次元半導体量産技術」を公開していたのだ。イ教授はサムスン電子の役員の前で「現在の主流である2次元の平面素子では高性能の半導体開発は限界を迎える」と述べ「素子の構造を3次元にすれば、消費電力と製品のサイズを小さくできるため、性能を大幅に高められる」と訴えた。

しかし、出席した役員たちの反応は冷ややかだった。イ教授が「今、3次元半導体の技術に投資しなければ後れを取る」と主張したが、出席者たちは「先走り過ぎではないか」といったムードだったという。イ教授は結局、1年4か月後の03年2月にインテルにこの技術を提案し、以降ロイヤルティーを受け取る条件でインテルへの技術移転を進めた。インテルは11年、世界で初めてFinFETの量産に成功し、世界一の半導体企業の座を固めた。

サムスン電子の関係者は「当時はわれわれも3次元半導体技術の開発に乗り出していた」と釈明した。それに加えて当時、世界の半導体業界が供給過剰で厳しい状況に追い込まれていたという状況を考えれば、数千億ウォン(数百億円)もの開発費を要する技術をすんなりと導入するのは難しかっただろう。しかし、韓国を代表する企業各社は、新技術への果敢な投資を怠ったことで「ファーストムーバー(市場の先行者)」になるチャンスをことごとく逃してしまった。ソウル大工学部のイ・ジョンホ企画部学長は「当時、韓国の大企業のシステムでは誰がその場にいたとしても同様の結論を下すしかなかっただろう」と述べた。

企業用ソフトウエア世界第2位のドイツ企業、SAPは11年から全てのソフトウエアをビッグデータ処理技術「HANA」のプラットフォーム上で作成している。この技術は従来のハードディスクドライブ(HDD)よりも読み書き速度が数百倍速い半導体メモリに大半のデータを乗せて処理する。おかげで、以前は想像もできなかったようなスピードで大容量のデータを処理することが可能になった。SAPが昨年「HANA」を適用したビッグデータ処理用ソフトウエアで稼いだ金額は10億ユーロ(約1300億円)を超える。SAPにこのように大きな利益をもたらした技術も、元はといえば韓国で生まれたものだ。2000年にソウル大のチャ・サンギュン教授が、研究室の大学院生らと共同でデータベース(DB)処理技術を研究する過程で、この技術を開発したのだ。

■すぐに利益が出ないものには関心がない韓国

「HANA」の技術も初めからSAPの手に渡ったわけではない。チャ教授は当時、この技術を韓国で常用化しようとさまざまな努力を重ねた。韓国の大企業への接触を試みたり、自らスタートアップ(起業したばかりの企業)を立ち上げたりした。チャ教授は「当時、韓国ではITブームが起きていたが、みな即座にカネになる技術にしか関心がなかった」「『HANA』 のようなソフトウエア技術に興味を示す投資家や企業はなかった」と話した。

結局チャ教授たちは2002年、韓国を離れて米国シリコンバレーへと移った。そこでSAPに出会った。SAPは韓国からやって来た見慣れない技術に期待以上の関心を示した。近い将来ビッグデータ時代が幕を開ければ、既存の技術よりはるかに高速なデータ処理技術が必要となることを、同社は予測していたのだ。結局、チャ教授の開発した技術はSAPに売却された。

世界最大級の石油企業の一つ、フランスのトタル社が活用する最先端の地下油田探査技術も、韓国で生まれたものの残念ながら自国で確保できなかった技術だ。この技術はソウル大のシン・チャンス教授チームが08年に開発した。地価に埋蔵されている原油を、地震波を利用して探知するもので、同様の原理を利用した従来の技術よりも解像度がはるかに高く、油田探査の成功率を大幅にアップさせた。

 
シン教授のチームは当時、韓国の複数のエネルギー企業にこの技術の移転を打診したが、提案を受け入れる企業は1社もなかった。業界関係者は「韓国のエネルギー企業の中で直接石油を探査してボーリングする企業はほとんどないため」と説明した。最終的にこの技術は2010年、125万ドル(現在のレートで1億4000万円、以下同じ)の技術使用料と引き換えにトタル社に移転された。現在トタル社はこの技術を活用して中東や北海などで油田の探査を進めている。

■韓国が拒否し、グーグルに売却された「アンドロイド」

海外から「棚ぼた」の形で入ってきた新技術を突っぱねてしまったケースもある。

外信によると、スマートフォン用オペレーティングシステム(OS)「アンドロイド」を開発したアンディ・ルービン氏は04年、アンドロイドOSを売却するためにサムスン電子と接触した。

ルービン氏は韓国を訪れ「全世界のスマートフォンメーカーに無料でOSを提供し、エコシステムを構築したい」と事業戦略を紹介し、提携と投資を要請した。しかしサムスン電子の役員らはルービン氏の提案を拒否した。「わが社のエンジニア数千人でもできないことを、社員わずか6人のあなたの会社ができるというのは信じがたい」という理由だった。

韓国にアンドロイドOSを提案して断られたアンドロイド社はその2週間後、グーグルに5000万ドル(約56億円)で買収された。

アンドロイドも、サムスン電子が手掛けていればグローバル化に成功していなかった可能性もある。ソニーも自社製品のグローバル化を試みたものの、何度となく失敗していた。

韓国のスマートフォンメーカーのある幹部は「小さなネジすら必要のないグーグルのアンドロイド事業は現在、利益率が70%を超える。あのとき韓国がアンドロイドを買収していれば成功していたかといわれれば、それは保障できないが、少なくとも現在のようにグーグルに完全に従属するという状況は避けられただろう」と述べた。

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