20907 書評『若い有権者のための 政治入門』   宮崎正広

■誤解は「デモクラシー」と「民主主義」としたところから始まった リンカーンの演説も誤訳「人民を統治する政府」が正しい。

  
<藤井厳喜『若い有権者のための 政治入門』(勉誠出版)>

政治学者の藤井厳喜さんが、18歳から投票権が付与される次回選挙を目前にして、やさしい政治入門書を書かれた。

「選挙に行く前に知っておきたい常識の総まとめ」とキャッチコピィにも謳われており、政治のイロハから説き起こし現実の世界情勢のリアリティを前に何が判断材料となるかを、懇切丁寧に解説してある。若い有権者は必ず手にとって欲しい本である。

さて、入門編だから平明だが、じつは通読して、たいへん大事なポイントを列記され、時代に即した解説が付与されていることには驚かされる。

そもそもデモクラシーが「ミンシュシュギ」と訳されたことは誤訳であると藤井さんは問題を提議するのだ。

デモクラシーとは評者(宮崎正広)流解釈では「下克上」のことである。藤井さんは、デモクラシーは「民主政治」と翻訳されるべきだったと批判され、こう付け加える。

「国家の統治形態」を区分けし、アリストララシー(賢人政治)、ビューロクラシー(官僚政治)、そしてオートララシーは独裁政治、ついでに卑弥呼時代の神権政治は、「セオクラシー、金権政治は「ティモクラシー」と政治学では定義している。

ところが主義(イズム)というのは思想的イデオロギーだから「民主主義」ではなく、ただしくは「民主政治」と言うべきだと、基本の基本を説かれる。

リンカーンの「人民の人民による人民のための政治」というのも、誤訳である。正しくは「人民を統治する政府」となる。

日本外交の基幹に或る「国連」も面妖きわまりない対象でしかないとして、藤井さんは続ける。

「今の世界には統一した法の執行機関は存在しません。要するに、国家の上に位置する世界政府みたいなものは存在しない(中略)。国際法では、あらゆる条約は全て暫定協定であるという考え方」を基盤としている。

憲法に関しても、占領基本法でしかない現行憲法を平和のシンボルのようにありがたがっている日本人の国連信仰とかの、面妖なる考え方は、平和カルトであるという意味のことも最後に付け加えられているが、このあたりに、藤井さんがもっとも言いたかった主張の伏線が潜んでいる。

入門編とおもったらトンでもない、平明にかかれた政治のリアリティ解説になっている書物だった。

 <a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

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