20953 書評「いま誇るべき日本人の精神」   宮崎正広

■変化球の名手が、ユーモア筆法で「ヘイワ」という空念仏を斬る 「鰯の頭も信心から」とかの「まじない札」が「憲法九条」だ

<加瀬英明『いま誇るべき日本人の精神』(KKベストセラーズ)>

おなじみ加瀬英明氏の現代日本論の最新バージョンである。

いつもの加瀬節が炸裂するが、語彙の選択の基準はユーモラスな筆法にふさわしく、それでいて左翼の欺瞞の本質をざっくりと抉り出す適切な用語を選択している。

平明で力に溢れる文章、加瀬氏独特のボキャブラリィはいつも不思議な魔力的な精神性を秘めている。

この本でも登場するのは、まず「加瀬の法則」と呼ばれるもので、「全体主義国家が五輪を開催すると九年後に崩壊する」。これがワシントンでも話題のKASES‘LAWだ。

まさしくベルリン五輪から九年後、ヒトラー体制は崩壊し、モスクワ五輪から九年後に、ソ連崩壊が始まった。

北京五輪から九年後とはすなわち来年(2017年)、北京の独裁政権は崩壊を始めるだろうという。

加瀬さんがワシントンで、こうした講演をおこなうとアメリカ人からも拍手が起こるが、それは抜群のユーモアに対してであるという。

平和憲法は「まじない札」である。

――なるほど分かりやすいなぁ。もし左翼がいうように「安保法制」が「戦争法」なら、中国は「戦争国家」であるとも比喩される。憲法九条は「平和念仏」だが、「平和ぼけ」とは「保護呆け」のことであり、いまの占領基本法でしかない「憲法」を後生大事に戴き続けることは「属性国家」の継続を意味する。

その「属国」を、戦後の我が国のマスコミ、リベラリズムの政治家、左翼文化人等が「平和」と言い換えてきた。この状態を加瀬氏は「寄生虫の平和」とユーモラス筆法で切って捨てる。

鰯の頭の信心からというなら、平和憲法は鰯の頭だ。
 訪米した安倍首相は連邦議会で演説したが激烈な歓迎の拍手で迎えられ、「反動」「挑発者」と当初、命名されていたのが、米マスコミからも「朋友」と称えられた。

対照的に、習近平は訪米に際して自ら希望した議会での演説を断られた。

日本のマスコミが大きく伝える「米中戦略対話」は、ちょうど加瀬氏がワシントン滞在中に行われていたが、米国のマスコミは一行も報じなかった。このため国務省のHPで進展を確認したという。

このような絶妙な現代日本論の間に何気なく挟まって、加瀬氏が若き日にまだ存命中だったマッカーサー元帥と会見したときの逸話がでている。これは歴史的証言としても参考になると思った。

<a href="http://www.kajika.net/">杜父魚文庫</a>

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