■「だから何だ」というのが支持者の反応
共和党内の不協和音はまだ納まっていない。
党大会の土壇場で奥の手を使ってでもトランプを正式な党候補から引きづり降ろそうという工作も、いくつかのグループに分かれて進んでいるが、各セクトが団結できないため、それぞれが勝手な動き、誰も統率できる指導者がいない。
党を割って独立候補を擁立しようとする動きもミット・ロムニー(マサチューセッツ州知事)を基軸に、ネオコンのイデオローグらが画策している。
しかし、「ヒラリーを落とすことが先決だ」とウォールストリートジャーナルが唱え始めたため、保守本流と穏健派、ウォールストリート派からは、トランプ一本化への暗黙的合意がある。
トランプのスローガン[MAKE AMERICA GREAT AGAIN]に重ねて「MAKE OUR PARTY GREAT AGAIN」運動が持ち上がった。ユタ州の活動家らが組織したもので、「まだ捜せば有力な候補者は居るはずだ」と訴えているが、党内でも相手にされていないようだ。
ラジオ番組の人気ホストを務めるエリック・エリクソン(ネオコンの論客でもある)らは「トランプを撰ぶなんて共和党は集団自殺でもするつもりか」と手厳しい。
「党大会の代議員への多数派工作を積極的におこなえば、トランプ優勢を崩せる」といまも主張しているが、同調者はあまり集まらない。
党首脳らは「もっと団結して党をまとめよう」と、反トランプ連合には否定的な姿勢に変化してきた。
「党の規則を変えよう」「この際、共和党の刷新には素晴らしいチャンスだ」「党を救え」という党内のセクトの動きもあちこちで花盛りだが、どれも一本化出来ない状態である。
▼ 南東部エバンジュルカルの大票田はトランプ支持へ
他方、共和党の大票田は南東部のエバンジュリカルである。
教義からすれば二回も離婚しているトランプへの嫌悪感が消えないはずだが、サウス・カロライナ州予備選での勝利は、こうした「バイブル・ベルト」と呼ばれる信仰心熱いプロテスタントの多い地域でも、トランプがそれに近い主張をしていたテッド・クルーズを破ったことが象徴するように、「中絶」「信仰の自由」「最高裁判事任命」などのイッシュウではトランプの主張が受け入れられた。
嘗てレーガン、ブッシュの大票田となったエバンジュリカルの伝道師、70年代からの「モラル・マジョリティ」運動。とくにジェリー・ファルウェル師らも「同性愛結婚反対」「ファミリー・バリュウの尊重」などの問題で、トランプの主張には同意できるとした。
もっとも、これら南部パブチスト諸州は「アンチ中央、アンチ・エスタブリシュメント」のメンタリティが強いため、アウトサイダーのトランプを好感している。
ネオコンの動きはといえば、総帥格のウイリアム・クリストルが旗振りとなって、マイク・マーフェイ、スチュアート・ステーブンスらが四月半ばごろから集まって協議しているものの彼らが求める「独立候補」は、例えばベン・サッセ上院議員(ネブラスカ)、トム・コバーン前上院議員(オクラホマ)ら誰もが、独立候補となることはためらう。
かれらは水面下でブルームバーグ擁立にも動いたが、果たせず、共和党の集金マシンとして奔走するスペンサー・ズゥックなどは、「いまさら独立候補などカミカゼか」と吐き捨てる。
ワシントンポスト(5月17日)はマフィアの元顔役でモスクワからの移民でもあるフェリックス・セイターという人物がNYのトランプタワー27階に事務所をもち、しばしばトランプと密談をして、ロシア、ウクライナ、中国への進出で協議を重ねた経緯があるとすっぽぬいたが、何れも過去の話であり、プロジェクトはどれも宙に浮き、トランプ陣営はセイターとの親しいつきあいを否定している。
セイターは2008年に作家のティム・オブライエンが書いた『トランプ帝国』で怪しげな経緯を書かれ、名誉毀損で訴えを起こしたが、この裁判は取り下げとなった。
共和党全国大会は7月18日からオハイオ州クリーブランドで開催される。オハイオ州知事はつい先週まで三位につけていたケーシックだ。
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