「沢内年代記」を読み解く(十七)  高橋繁

寛政六年 甲寅(キノエトラ・・・1794年の記録)  
◇新町堰の工事始まる  ◇鳥海山の噴火  ◇横綱谷風の死
①米、農作物の出来具合は中ぐらいの出来。平年作並の出来であった。
②年貢割合は去年より二歩安くなった(「巣郷本」「白木野本」)「下巾本」には「去る丑の年の通り仰せ付けられた」とある。「下巾本」の記録は代官所の側に立った記録が多いことから、あるいは「二歩引き」はなかったかも知れない。
御代官 大里所右エ門、箱石覚右エ門

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平和国家は歴史に名を残さない 古沢襄

シニカルな言い方をすれば、戦後60年以上も続いた平和の時代は、これが百年続こうと歴史には残らない気がする。言い方が悪いかもしれないが、歴史というのは戦争、争乱、征服、侵略の集大成だといえる。今の様な平和な時代は、後世になってドラマチックな要素に欠けるので、小説やドラマになりくい。

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「沢内年代記」を読み解く(十六)  高橋繁

寛政元年 己酉(ツチノトトリ・・・1789年の記録)  
①米、農作物の出来具合は下作。例年以下の出来であった。年貢課税割合は安永四年の割合より、三歩安くなった。
②御代官 野々村七右エ門、日戸善兵衛。
③御買上米高 一石(150㎏)につき一升(1.5㎏)余りの税であった。
④「草井沢本」
 ◎寛政元年になる。 4月15日に月蝕。10月1日に日蝕、6分欠ける。閏6月あり。田畑の収穫は半作(平年の半分の収穫)。

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「沢内年代記」を読み解く(十五)  高橋繁

天明六年 丙午(ヒノエウマ・・・1786年の記録) 
①米をはじめとする作物は出来が悪く、下の下作。稲は青絶ち(生気がなく枯れそうになっている)。毛見役が来て作柄視察・検査し上納した。御代官本宿弥惣右エ門、坂牛吉右エ門。
②この年米一升(1.5㎏)が七十文(1文30円とすれば2.100円。1文50円とすれば3.500円)。秋田から来た米は一升、八十文(2.400円から4.000円)という高値であったので人々は困窮を極めた。
③このような現状を見届け検分されたのは七之戸安右エ門、上野甚右エ門であった。

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南船北馬の伝統がいまも深く根付く中国 宮崎正弘

獄中のホドルコフスキー、釈放求めハンガー・ストライキへ。不正蓄財、脱税、不法送金などプーチンがでっち上げた冤罪。

かつてロシア新興財閥の象徴にしてロシア第二の財閥だったミハイル・ホドルコフスキー(元「ユコス」社長)は03年に突如逮捕されて以来、まだ獄中にある。

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扶余・高句麗・百済と新羅の建国神話 古沢襄

古代朝鮮の高句麗、新羅、百済三国の歴史は、まだ未解明な部分が多い。ひとつには戦前・戦中の古代朝鮮史の研究が日本人研究者の手に委ねられ、一定の水準を保ちながら、それ以上のものになり得なかった事情がある。

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「沢内年代記」を読み解く(十四)  高橋繁

天明元年 辛卯(カノトウ・・・1781年の記録) 
①五月閏あり。米をはじめとする農作物の出来具合は悪かった。下作。課税歩合は安永四年の未の年より一歩(1%)安くなった。入石(他領地・秋田藩や伊達藩から買い入れた米)は一升あたり三十文(900円から1.500円)であった。「草井沢本」には入石は、清水カ野の久左エ文の家に入る。(取り扱った)と記録されている。
②五月二十七日大洪水になり、湯本の山室橋が流れ落ちた。橋架け替えの時、紛失して十四年もなる湯本の薬師如来像が、湯田の佐吉の子、巳之助という者によって山室の淵より拾い上げられた。(神社に奉納された。)

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サソリ王妃に刺されたジンギス汗 古沢襄

北アジア史に興味があった私は、「蒙古源流」に出てくるグルベルジン・カトウンという美妃の悲話に心を惹かれる。グルベルジン・カトウンは別名でサソリ妃、シルクロードの要衝の地で、交易で栄えた西夏の王妃であった。

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「人斬り以蔵」と坂本龍馬 平井修一

龍馬が幕末維新の「明」なら、同じ土佐藩出身の岡田以蔵は「暗」だろう。二人は青雲の志を抱いて国を後にし、同士として交際したが、龍馬は「維新の奇才」として讃えられ、以蔵は「人斬り以蔵」として軽侮され、没後145年の今でも以蔵を讃える人は少ない。

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「沢内年代記」を読み解く(十三)  高橋繁

安永四年 乙未(キノトヒツジ・・・1775年の記録)
①十二月一日 日蝕。
②二月七日 赤雪降る。(赤雪は、中国から季節風によつて運ばれてくる黄砂のこと。現在も二月初めから三月にかけて降る。白い雪に積もるので冬は目立つ)積もること六寸余り(1寸は3.3cm。6寸は約20cm)。黄砂だけでなく雪と混じって積もった量と思われる。それにしても、一日に降った量としては記録的に多い量である。

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鳩山一郎氏が参拝した「出世明神」と高句麗神話 古沢襄

参拝すれば総理大臣になれるという「出世明神」が埼玉県日高市新堀にある。鳩山首相の祖父・鳩山一郎氏もこの神社を参拝した後に首相官邸の主になった。歴代の総理大臣では浜口雄幸、若槻禮次郎、斉藤実、小磯国昭、幣原喜重郎氏らが参拝していた。政治家というのは”縁起”を担ぐところがあるらしい。

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