首相は人気とりの広島行きにしてはならない     古澤襄

▼日本列島は北は北海道から南は九州まで自然の猛威に曝されている。これに九月になれば台風の直撃にも備えねばならない。二〇〇〇年の歴史の中で日本人は自然の猛威に耐え、これを克服する努力を重ねて生きてきた。忍従の歴史である。

▼動員された自衛隊、警察、消防の連携のとれた救助活動には頭が下がるが、これを最大もらさず報道しているメデイアの活動ぶりにも敬意を表したい。全国から救援の募金活動が始まった。願わくば二次災害に曝されないように細心の注意を払った救援活動に努めて貰いたい。一種の国難といっても言い過ぎではない。

▼思えば広島は日清戦争で「広島大本営」が置かれて明治天皇が行在し、第7回帝国議会は広島市で開かれるなど、臨時の首都機能を担っている。内閣改造人事を遅らせてでも、安倍首相は広島に行き、国民の不安を払拭することが緊急に必要ではないか。単なる人気とりの広島行きにしてはならない。国をあげて自然災害に立ち向かう姿勢を示すことが必要である。

▼眼を世界に向ければ、ロシアとウクライナが一触即発の危険な段階になった。局地戦が避けられないのではないか。経済制裁から軍事力の行使になれば、世界経済は混迷せざるを得ない。この時期に政界のリーダーたるべきオバマの力量の何と弱々しきことよ。

▼それにしてもおぞましい事件である。米ニュースサイト「グローバルポスト」などに記事を投稿していた米フリー・ジャーナリストのジェームズ・フォーリー氏はフランス生まれだった筈である。英紙ガーディアンによれば同氏の首を切断した実行犯はイギリス人の疑いが濃いという。

▼イギリスではイスラム過激派に共鳴する若者がシリアなどに渡って戦闘やテロ活動に参加することが社会問題化しているが、シリアやイラクに渡航したイギリス人は過去2年で400~500人に達する。それが帰国してイギリス国内でテロを引き起こす可能性が十分考えられる。

▼国内体制を水も漏らさぬしっかりしたものにすることが先決である。勝ち組だけがいい思いをする欧米的なグローバリズムでは限界がみえてきた。古来、日本には民とともにある政治が重んじられていた。二〇〇〇年の歴史の中で祭祀を司る天皇が連綿として続いてきた。

▼第16代仁徳天皇は、人家の竈(かまど)から炊煙が立ち上っていないことに気づいて租税を免除し、その間は倹約のために宮殿の屋根の茅さえ葺き替えなかった、と言う古事記や日本書紀の逸話(民のかまど)が今日でも伝わっている。

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