「大薬王樹」の効能 古沢襄

わが家の庭に枇杷の木が植えてある。もう十五年もたった古木なのだが、成長が早いので毎年、枝おろしに苦労している。実(み)がなると野鳥が飛んできて、あっという間に食い散らしていく。

この枇杷の木は古来「大薬王樹」といわれてきた。中国から日本に伝わったのは、奈良時代。漢方書の「本草綱目」に枇杷葉に関する文献が残っている。インドの古い経典では、枇杷の木は「大薬王樹」、枇杷の葉は「無憂扇」と説かれている。

高校生時代にサッカーの選手だったので、練習試合で膝を強打して以来、正座が苦手となった。法事などでもあぐらで勘弁して貰っている。福岡支社長時代に部下の部長さんから”枇杷の葉・療法”を勧められた。

わざわざ来宅して枇杷の葉を風呂場で洗い、細かく切って薬用アルコールに漬ける。そのドロドロになった液をガーゼに浸して、その上から温めたタオルを載せるという療法であった。この手の民間療法は、あまり信じない方だったが、二週間もすると膝の痛みが嘘のように消えた。

その記憶があったので、この地にきて庭に枇杷の苗木を植えてみた。枇杷の葉が必要だったから実の方はどうでもいい。ところが枇杷の種に薬効があると知った。野鳥が食い散らかした実から種を拾って保存してある。

枇杷の薬効は、含まれているサポニン、アミグダリン、ビタミンB17、タンニンなどが、鎮咳 去痰 胃腸 鎮吐 皮膚炎 かぶれ 湿疹などに効くという。とくに種のアミグダリンは、葉の1300倍もが含まれている。粉末にして飲用するのだが苦いので、そこに難点がある。

おまけにアミグダリンは胃腸で分解されると猛毒である青酸を発生するという説がある。取り扱いを間違えると健康を害し、最悪の場合は命を落とす危険性があるという。

それやこれやで枇杷の木は茂るにまかせて放っておいた。

自然食・自然療法の研究家に東城百合子さんという方がいる。岩手県葛巻町生まれの方で医者に見放された肺結核を玄米自然食と自然療法で治している。

この方が「薬草の自然療法」の著書で、骨髄腫で医者が見放した女性が毎日枇杷の種を二つ食べて、二ヶ月で骨髄腫を治した体験談を書いている。骨髄腫は現代医学では治りにくい”血液のガン”なのだが、枇杷の種で快癒したのが事実ならば驚くべき奇跡といえる。

冬を迎えようとしている庭の枇杷の木を眺めながら、いずれは「大薬王樹」のお世話になるか、と思ったりしている。もっとも二ヶ月分に必要な種は六十個。十数個しか保存していないので、当分の間は「野草酵素」に専念するしかない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です