先住民の参加色濃いバンクーバー五輪開会式 古沢襄

カナダ・ヨーク大学のテッド・グーセン助教授の「暗夜行路における自己と自然」、カナダ・ヴィクトリア大学助教授の「泉鏡花の超自然主義」、カナダ・トロント大学のアンソニー・リーマン教授の「風景の川、文体の川」という三論文の邦訳テキストを読んだことがある。

イギリスとフランスの移民国家という印象があるカナダで日本文学とくにアニミズムの世界に関心があることに不思議な感じを持った。一九九二年、もう十八年昔のことになるが、三つのテキストは今も持っている。

今、冬期オリンピックが開催されているバンクーバーで日本の城西国際大学とカナダのブリテイッシュ・コロンビア大学の共催で「日本文学にみる自然と自己」をテーマにした会議も開かれた。同じ頃のことになる。

バンクーバー・オリンピックの開会式をテレビの生中継で見ながら、大会の理念となる先住民の参加を色濃く出した演出に、西欧的なカナダ人に心の中に「自然と自己」というテーマが重要な位置を占めていることを改めて思った。

カナダは三度目のオリンピックを迎えたが、日本で次のオリピンピックを開催するするなら、縄文の歴史を刻む日本文化を世界に訴える「歴史と日本文化の祭典」をテーマにしてして欲しいものである。

<【バンクーバー小坂大】長く苦難の歴史を歩んできた先住民たちにスポットライトが当たった。当地のBCプレースで12日夜(日本時間13日午前)に開会式が行われた第21回バンクーバー冬季五輪。五輪史上初となる屋内での式典は、大会の理念となる先住民の参加を色濃く出した内容だった。

開会式は過去20回の五輪開催地の紹介から始まった。その歴史が「2010年バンクーバー」にたどり着くと、会場内に花火が上がり、場内に設置されたジャンプ台を滑り降りてきたスノーボーダーが、巨大な五輪マークをくぐり抜けて着地。カナダ国旗が入場し、国内で大人気の若手歌手、ニッキ・ヤノフスキーさん(16)が国歌を歌い上げた。

会場の中央には4本の巨大なトーテムポールが起き上がる。競技会場の周辺を居住区とし、大会ホストとして準備を進めてきたリリワット、マスクエアム、スコーミッシュ、ツレイル・ウォウトゥスの先住民4部族が民族衣装で踊りを披露しながら入場した。

カナダの先住民は、19世紀に進出してきた英国とフランスなど欧州各国の支配のもとで差別を受け、今も失業率は高い。しかし、大会を通じて先住民の施設整備など関連事業に約1億5000万カナダドル(約127億5000万円)が投資され、暮らしぶりは改善されてきた。五輪組織委員会とともに大会準備にあたった4先住民協会のテワニー・ジョセフ最高経営責任者は「恥辱にまみれた歴史だったが、五輪に一般のカナダ人とともに取り組んだことは新たな希望をもたらしてくれた」と語る。入場行進を歓迎していた先住民たちの表情は「With Glowing Hearts(輝く心とともに)」の大会スローガンを象徴するかのように輝いていた。

入場行進はギリシャから始まり、日本は旗手の岡崎朋美選手(富士急)を先頭に43番目に入場。選手たちは日本とカナダの小さな国旗を振って、観衆の声援に応えた。

また、この日の午前中にリュージュの男子選手が公式練習中の事故で亡くなったグルジアは30番目に登場したが、選手や役員たちは右腕に喪章、国旗にも黒いリボンを下げ、沈痛な面持ち。国際オリンピック委員会のロゲ会長をはじめ、スタンド中の観客が立ち上がって哀悼の思いを伝えた。会場の外にはカナダ国旗と五輪旗の半旗も掲げられた。(毎日)>

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