米国に不穏な影…政治的背景に不安感   古澤襄

このところ米国で発生しているボストン爆弾テロなど不穏な事件の連鎖に、広い意味で政治的背景があると思うには私だけであろうか?

白人優位のアメリカ社会は、確実に黒人や中南米のヒスパニックが力を得ている。オバマ政権はその新勢力の熱狂的な支持を得て再選され、リベラルな政策を実現しようとしている。ネオ・コンサーバテイズムが力を得て、アフガン戦争、イラク戦争をリードしたブッシュ共和党政権とは様変わりをみせた。

とはいえ米国社会にはキリスト教保守主義を信奉する保守派が根強く残っている。ネオコンも逼塞したわけではない。白人至上主義者の中には極右的行動に走る者もいる。

このような政治的背景が、外交政策で弱腰とみられるオバマ政権に対してイライラ感を募らせているのは間違いない。いま発生している不穏な事件の連鎖は、FBIなどによって容疑者が逮捕されるかもしれない。しかし、米国社会を覆う対立の根は深く、いつ爆発するかうかがい知ることができない。

その方が怖い。

<【ワシントン=佐々木類】多くの死傷者を出した米南部テキサス州での肥料工場爆発事故とボストン爆弾テロ事件、オバマ大統領らに送られた猛毒リシン入りの手紙と容疑者逮捕-。それぞれの関連は不明だが、米国社会はここ数日、不穏な出来事に相次いで見舞われている。

米捜査当局によると、ボストン、ワシントンという大都市に加え、テキサス州で起きた一連の事故、事件を結びつける証拠は今のところ、何も出ていない。ボストン爆弾テロ事件後に発覚した、リシン送付の容疑者逮捕も、爆弾テロとの関連性は認められていない。

しかし、17日夜、テキサスで起きた大規模爆発・火災で、にわかに米国社会の一部で取り沙汰され始めたのが、何らかの政治的背景だ。

20年前の1993年4月19日、今回の爆発火災現場の近くで集団自殺事件が起きた。同じテキサス州ウェーコ近郊で、キリスト教武装集団「ブランチ・デビディアン」の信徒が51日間にわたって教団施設に立てこもり、その間、連邦の銃取締官と銃撃戦を展開。施設が爆発炎上して80人以上が集団自殺した。

当時、反連邦政府主義を掲げる米国の右翼活動家の多くが、この事件をFBIと、連邦アルコールたばこ火器取締局(ATF)による弾圧ととらえ、武装グループを組織した経緯がある。

これを機に増加した反連邦政府武装集団「義勇軍」のメンバーが、2年後の95年、オクラホマ州オクラホマシティーで連邦ビル爆破テロを起こした。彼らは反連邦政府、反納税、反銃規制などを掲げる白人至上主義者で、その拡大は大きな社会問題となった。

図らずも、17日は銃規制をめぐり、連邦議会とオバマ大統領サイドが議会採決で正面からぶつかった。

上院は本会議で、すべての銃取引で購入者に対する犯罪・精神疾患歴の確認を義務づけるとした銃規制強化法案の修正案を否決。この後、オバマ大統領は「大いに恥ずべき日だ」と野党共和党を強く批難した。上院はオバマ氏が所属する民主党が多数派だが、全米ライフル協会(NRA)をはじめとする保守派の攻勢で切り崩された形だ。

米国は宗教的背景を持つ妊娠中絶問題や銃規制、移民政策などで分断されてきただけに、捜査当局も、同時期に発生した不穏な事件の関連性について関心を示しているようだ。(産経)>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です