■麻生・黒田・谷垣 来年10月に予定通り10%消費税再増税論
安倍首相は来年10月から予定通り消費税を10%に増税するか、年末までに最終決断をせまられている。予定通り派は麻生副総理・財務相、黒田東彦日銀総裁、谷垣自民党幹事長の三人組。
首相側近の浜田宏一・米イエール大名誉教授(内閣参与)と本田悦朗内閣官房参与(静岡県立大学教授)は1%ずつの段階実施か、一年半の延期論。首相も菅官房長官も統一地方選挙とのかね合いをはかる政治論で延期に傾いているとの説が流布されている。
財務省は来年10月から予定通り消費税を10%に増税する立場。外遊で口が軽くなった麻生副総理・財務相は「上げないことによって世界中からの信用が落ち、国債を売り浴びせられると、影響が見えない。そうならないようにする対応が大切」と述べ、先送りせず、予定通り増税すべきだとの考えを示した。
これが海外向けリップ・サービスなのか、首相を説得する意気込みをみせたのか腹の中は分からない。首相も迷いがあるのだろう。黒田日銀総裁を官邸に呼んで日銀側の判断を求めている。
予定通り派の谷垣幹事長は2012年に自民党が民主、公明両党と消費税10%への引き上げで合意したときの自民党総裁。財政再建論者として知られるからマーケットでは「消費再増税決定に向けた布陣ではないか」との見方も生まれた。
三顧の礼を尽くして前総裁を幹事長に迎えた首相だから財政の専門家である谷垣幹事長の意見も聞かなければならない。政治論の延期説か、財政論の予定通り説か、すべての裁断は首相の判断にかかっている。
現段階では延期論が濃いといえる状況ではなく、予定通り派の巻き返しが始まったとみるべきだろう。ただ言えるのはメデイアの世論調査では国民感情は延期論が圧倒的に多い。
安倍首相が予定通りの裁断をすれば、戦後政治で一内閣が二度の消費税増税を行った首相として歴史に残るであろう。その代わり国民不満が高まり、退陣を迫られる政治状況が生まれるであろう。
アベノミックスは第三の矢をこれから本格的な構築の段階に入る。無策の民主党政治で為す術がなかった日本の景気回復は、安倍政権によってトンネルの先にかすかな光が見えている。高い支持率をキープしている安倍人気は、そこにある。
喉元過ぎれば熱さを忘れるの格言通り予定通り派は、安倍首相の人気と引き替えに消費税の増税を果たそうとしている。その代わり消費者の実質購買力は低下し、内需に大きな打撃を受ける公算が強い。
ここは成長重視型の経済政策に専念し、日本経済の再生を確かなものにして、そううえで10%消費税を実行する”家康型”の息の長い政治判断が正解ではなかろうか。
【ミラノ=五十棲忠史】麻生副総理・財務相は12日のアジア欧州会議(ASEM)財務相会議後の記者会見で、来年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げについて、「上げないことによって世界中からの信用が落ち、国債を売り浴びせられると、影響が見えない。そうならないようにする対応が大切」と述べ、先送りせず、予定通り増税すべきだとの考えを示した。
麻生財務相は「景気が確実に上がっていくという流れを作り上げておかなければならない。景気が落ち込んできた時のやり方は、何回も経験があるので、よく分かっている」と語り、補正予算を編成して経済対策を行う可能性を示唆した。(読売)
■日伊 経済再生へ取り組みを確認
麻生副総理兼財務大臣はイタリアで開かれたASEM=アジア・ヨーロッパ会議の財務相会合に出席したあと、議長国を務めたイタリアの経済財政相と会談し、ユーロ圏経済のデフレ懸念が続いていることなどを踏まえ、両国が経済再生に向けて取り組んでいくことなどを確認しました。
ASEMの財務相会合では、ヨーロッパ経済について、ウクライナ情勢などの影響を背景に、ことし後半も回復は弱いとしたうえで、力強い成長を回復させるには「健全な経済政策の着実な実施が不可欠だ」という声明を採択して閉幕しました。
会合を終えた麻生副総理は、日本時間の13日午後、議長国イタリアのパドアン経済財政相と会談し、ことし6月に決定した政府の成長戦略や、財政健全化の取り組みを着実に進めていることなどを説明しました。
また、ウクライナ情勢を巡る欧米とロシアの対立が続くなか、ユーロ圏経済のデフレへの懸念が強まっていることなどを踏まえ、両国が経済の再生に向けて、成長戦略など経済の改革に取り組んでいくことを確認しました。(NHK)
■黒田日銀総裁と消費税10%
首相、日銀総裁と昼に会談 消費再増税で意見交換。 4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率が前期比年率7.1%減に落ち込むなど足元の景気認識について協議し、来年10月に消費税率をさらに10%に上げる最終判断を12月に控えて今後の経済動向も意見交換するとみられる。
首相と総裁の会談は3日の内閣改造後初めてで、4月15日以来。
首相は消費税率の引き上げを7~9月の経済指標をみて12月上旬に最終判断する。内閣府は4~6月期の実質GDP成長率を前期比年率6.8%減から7.1%減へ下方修正し、足元の景気に下振れ懸念もある。
黒田氏は4日の記者会見で「財政健全化の努力に市場が疑念を持つ事態が起きれば、政府・日銀として対応しようがない」と予定通りの増税を主張した。
■谷垣自民党幹事長と消費税10%
自民党の谷垣幹事長は、消費税を10%に増税する必要性を強調したうえで、財政赤字の削減のために将来的には更に引き上げるべきだという考えを示しました。
自民党・谷垣幹事長:「先の借金をどう返していくかというところは、まだ全然、手がついていない」
谷垣幹事長は、消費税引き上げに伴う景気悪化などには対応が可能だとする一方、引き上げない場合の国債の暴落などのリスクは対応が困難という認識を示し、消費税を10%にすべきだという考えを重ねて強調しました。
また、2020年に予定通り国の収入と支出のバランスが取れれば、残る借金を返済するため、更に消費税をアップすることが必要だという認識を示しました。12日夜は、ともに消費税増税に尽力した公明党の山口代表と民主党の野田前総理大臣とも会談し、引き上げの必要性で一致しています。(テレビ朝日)
谷垣氏の自民幹事長就任で風向きが変わるかもしれない。谷垣氏は2012年に自民党が民主、公明両党と消費税10%への引き上げで合意したときの総裁だ。自身も財政再建論者として知られる。市場では「消費再増税決定に向けた布陣ではないか」(国内証券)との見方が強まっている。
ただ、今後控える地方選が、増税判断に微妙な影響を与える可能性もある。今年10月に福島県知事選、11月に沖縄県知事選、来春には統一地方選を控える。選挙に際して増税は不人気な政策だ。まして駆け込み需要の反動減からの消費のリバウンドが弱いというデータが相次ぐなかで、一段の増税は国民の支持を得にくいと多くの政治家が身構えている。(ロイター)
■本田悦朗内閣官房参与(静岡県立大学教授)は一年半先送り論
安倍晋三首相の経済政策ブレーンの1人である本田悦朗内閣官房参与(静岡県立大学教授)は、 消費増税の実施で消費者の買い渋りが続く中、成長重視型の経済政策は勢いを失いつつあると指摘した。
また、現時点で予定されている追加増税を来年実施するのは間違いだと警告した。
本田氏はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「アベノミクスの効果は昨年に比べると弱まっている」と語った。
また、現状が続くなら、日本銀行はある段階でインフレを目標水準に誘導するための施策をさらに講じる必要がある、とも述べた。
政府が4月1日付で消費税率を5%から8%に引き上げたことにより消費者の実質購買力は低下し、内需に大きな打撃となった。本田氏は、このような結果が来年繰り返されることを回避すべきだとの見方を示した。
「アベノミクスと消費税率引き上げは逆向きの方向性を持った政策。本来思いっきりアクセルをふかしているときにブレーキをかけたらどうなるか。車は必ずスピンする」と警告した。
黒田東彦日銀総裁が先週、来年10月に政府は消費税の再引き上げを予定通り行うべきだと話したことについて、本田氏は不快感を示した。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)
■浜田宏一・米イエール大名誉教授(内閣参与) 1%ずつ段階的に引き上げ論
安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は27日、ロイターのインタビューに応じ、日銀による「量的・質的金融緩和」(QQE)などの効果で国内需給がひっ迫する中、今後のアベノミクスは供給力の強化に向けて「第3の矢」である成長戦略に注力すべき局面にあるとの認識を示した。特に国際競争力を高め、国内に投資を呼び込むための大胆な法人実効税率の引き下げを主張。税率を25%程度まで引き下げるべきと語った。
2015年10月に予定されている消費税率2%の引き上げについては、1%ずつ段階的に引き上げることも選択肢との認識を示した。金融政策運営について、供給制約が意識されつつある中で、一段の緩和がインフレを生じさせる可能性に言及し、日銀が目標に掲げる物価2%の2年程度での達成にこだわる必要はないと語った。
<法人税25%程度へ引き下げ必要、消費税は段階的上げも選択肢>
安倍首相は9月3日に内閣改造を行う方針を表明しているが、浜田氏は、今後のアベノミクスの展開について「第1、2の矢から第3の矢に軸足を移し、第3の矢を真面目に追求すべき局面」とし、成長戦略に注力すべきとの認識を示した。
第1の矢である金融政策によって「需要に働きかける政策が成功した」と評価しつつ、需要の高まりに伴う供給制約が意識される中で「経済の生産余力が少なくなっている。今後はサプライサイドを増やさなければない」と指摘。法人税率引き下げのほか、規制緩和や女性の労働参加、環太平洋連携協定(TPP)の推進などの重要性を挙げた。
中でも「軸となるのが、法人税のドラスティックな引き下げだ」と強調した。政府は現行の35%台の法人実効税率を数年間で20%台に引き下げる方針を示しているが、浜田氏は「根本的に法人税制を改革し、租税特別措置中心の税制から国際競争力がつく法人税制に変える必要がある」とし、「世界的に法人税の引き下げ競争が起きている中で、微少の引き下げでは効果がない。少なくとも25%程度への引き下げが必要だ」と提唱。
財源問題についても、租税特別措置の見直しのほか、「日本に投資を呼び込むことで日本経済に活気が出れば、課税ベースを増やす方向になる」との見解を示した。
その上で、成長戦略の実現に向けて「第3の矢の成功には、政権を担う人が本気で官僚や関連業界などの抵抗勢力に打ち勝つ覚悟を持つことが重要だ」とし、「幸いにも安倍首相も菅官房長官も抵抗勢力を抑え込む姿勢が見える。しっかり応えようとしている」と期待感を表明した。
安倍首相は2回目の消費税率引き上げの是非を年末までに判断する意向を示しているが、浜田氏は大胆な法人税引き下げ実現を前提に「強く反対するわけではない」と述べつつ、1%ずつ段階的に引き上げることも選択肢との見解を示した。
<さらなる需要刺激はインフレ発生も、2年で物価2%にこだわらず>
消費増税による駆け込み需要の反動減の影響で、4─6月期の実質経済成長率は前期比年率6.8%減と大きく落ち込んだが、1─3月、4─6月の国内総生産(GDP)の変動は消費増税の影響という特殊要因もあり、先行きは「それほど悲観していない」と指摘。4月の消費増税は「消費者にとって打撃だった」としながらも、「他の政策をうまくやれば、以前のように悲観的な状況に陥るとは思えない」と述べた。
GDPや個人消費など足元のさえない指標を受け、市場では日銀による追加緩和観測も再燃しつつあるが、消費増税による反動減の影響という「ショックが発生している時に、金融政策の先行きを足元の数字で決めることは適切ではない」と語った。
その上で、供給制約が意識されている中で「それを無視して需要を付ければ、(供給の)天井にぶつかり、金融緩和を続けていくこと自体ができなくなってしまう」と主張。一段の緩和によってインフレが生じる可能性にも言及し、「私はインフレが欲しいわけではない。(日銀が目標に掲げる)2年で物価2%にこだわる必要はない」との見解も示した。
もっとも、今後、日本経済が底割れするような懸念が高まったり、労働市場を中心に需給が大きく緩むようなことがあれば「日銀によるサポートが必要」とし、7─9月以降の経済状況を注意深く見ていく必要があると強調。2回目の消費増税の影響を緩和するために政策対応が必要との判断になった場合には、補正予算など財政措置よりも「金融政策で対応するべき」との認識を示した。(ロイター)