4212 行く川のながれは絶えずして…③ 福島香織

■このシリーズまだ続いているのか、と思われるかもしれないが、続いているのだ、じつは。更新亀のごとく。
■鳩山政権発足1カ月あまり、まだこの政権がどこに向かうのか見極めがついていない。26日の所信表明演説をきけばわかるかも?でも「友愛社会」とか「経済合理性にかたよらない経済」とか定義の難しそうな言葉でケムにまかれるかもしれないなあ。
■さて、さまざまな政策の中にあって、外交というのはいかに高い理念があっても、相手があるので、結局リアリストでなければつとまらない分野でもある。というわけで、鳩山政権の外交はどこに向かうのだろう、ということを私なりに考えてみよう、というのが今回のエントリー。正直言って、手あかつきまくっているテーマだな、ごめん。
■岡田外相は原理主義者か現実主義者か
アフガンでプレゼンスを強めてめざすは日本主導で東アジア共同体って、ほんとう?
■先日、夜勤で本社編集局にいた。そしたら、先輩記者がたが、けっこう岡田外相をほめているのが聞こえた。「原理主義とかいって、けっこう現実主義やないか」とか。
何をいっているのかというと、21日付紙面などを見てもらえればわかるのだが、北朝鮮貨物船検査法を臨時国会に提出するしないで、岡田外相が提出すべきだと強く主張して、どうやら提出、成立する見通しになった。政府は見送る方針を固めていたので、岡田外相よくやった! というわけだ。
■麻生政権時代に貨物検査特措法案が成立していたら、海上自衛隊も関与できて、今回の法案よりもより、実効性がたかかっただろうとおもえば残念だが、とりあえず、国際社会で取り決めたことに、日本だけぐずぐず対応を遅らせるのはよくない、という常識が岡田外相にはあった。本当は当たり前のことをやっただけなのだが、スタート時点で見くびっていたので、単純な私たちは、岡田外相えらい!とか一瞬思ってしまったのだ。
■対中外交はともかく、米国に関しては、岡田外相は外交らしいことをやろうとしているといえるかもしれない。米国との間にある問題については、普天間基地、インド洋海上給油、アフガン・パキスタン支援をパッケージで交渉するとして、とりあえず、インド洋海上給油は撤収することで米国の了承をえた。
■給油はどちらかというと「テロとの戦い」の象徴的支援で、膨大な金と労力がかかるアフガン民生支援のほうが、本当は米国もありがたいんじゃないか、というヨミは、おそらくあたっていた。
このカードで、普天間基地問題も米国の譲歩を引き出すつもりだったが、ちょっとそれは無理らしい。と思いつつ、しかしぎりぎりまでごねてみよう、という感じが、岡田外相の言葉のはしばしににじんでいた。結局、23日、米軍制服組みトップのマイク・マレン統合参謀本部長にダメおしされて、普天間基地の移転先について「県外という選択肢はない」と表明したが、リアリストなら、そういう判断になる。
■外交というのは、最終的に譲歩するにも、思いっきり恩をきせてやるもんだ。普天間県外移転問題は、産経的には米軍再編成を根底から覆すような真似をしちゃ、日米同盟にひびがはいる、核の傘はどうなるのか、と反論をいってきたが、私的には、譲歩するにも、ちょっとごねて思いっきり恩を着せてみようというやり方は悪くないと思うよ。
■岡田外相の発言でさらに興味をもったはのは、PKO5原則を緩和したいと言った点だ。ひょっとして本気でアフガンやパキスタンにメードイン・ジャパンの平和を創る気でいるのだろうか。岡田外相はカブールを訪問したとき、タリバンの元兵士に職業訓練(たぶん警察組織訓練?)を実施するとかいっていた。テロリストといったって、実行している人は、別にイデオロギーで動いているわけではない。戦わずとも食えて家族を養うことができれば、戦いは緩和されタリバンとの和解のチャンスもできる、という「友愛」的考えだろう。
■しかし、これもあながち、的はずれではないと思う。アフガンの平和は、実行支配しているタリバン側と米国の対話がなければあり得ないことは、おそらくみんな分かっている。米国側だって分かっている。だからオバマ大統領が穏健派との対話も選択肢と言いはじめた。現地で医療活動しているボランティア医師の報告などみると、タリバンのイメージは、必ずしも狂信的集団でもないみたいだ。かれらも原理主義とかいいながら、なし崩し的に現実主義な部分もあり、対話がまったくあり得ないという相手ではなさそうだ。
■日本は昔からイスラム世界に受けが良かった。現地の普通の人々を味方にしながら民生支援ができ、日本が対話の雰囲気づくりに貢献できるようなら、米国にも恩は着せられるし、アフガン、パキスタン一帯の世論を親日本にできる。
■しかし、これは生半可な金や覚悟ではできない。日本のODA予算の半分以上ぶち込むくらいの気持ちがないと。彼の地の情勢を考えれば人的犠牲も辞さない覚悟も必要だろう。それを自衛隊にやってもらおうというなら、政府および日本国民の自衛隊に対する認識も変えないといけない。少なくとも憲法でも自衛隊は国軍としての地位と現場での権限をあたえてもらわないと。
■でも、かりに、そういうことができれば、鳩山政権がうたっている東アジア共同体構想とかの印象もぜんぜん変わってくる。
■アフガニスタン、パキスタンといえば、中国が資源確保兼インド洋覇権をねらって、米国防省のいうところの「真珠の首飾り」計画を着々と進行中。真珠の首飾りってなにそれ、と思われた方はこちらのサイトに参考になる地図がある。↓
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/420?page=2
■これら真珠に加えて、さらに最近では中国は、アフガニスタンでアイナクの銅山に巨額投資して、それを運び出すための鉄道敷設計画もあきらかにしている。地図でも分かるように真珠の首飾りはパキスタン・グワダル港(軍港)からはじまって、インド、ASEANを囲い込む形になっている。ASEANにとっては、やんわり首をしめられているような計画だ。クラ運河なんて完成したらシンガポールが日干しになってしまう。こういう状況で東アジア共同体といえば、中国を盟主とする冊封体制のことですか、と言われてしまう。
■しかし、もしアフガニスタン、パキスタンで日本が自衛隊による民生支援を実現し、平和をつくることに成功すれば、状況はかわってくる。中央アジア、インド、そしてASEANへの影響力、プレゼンスは中国と日本、どちらが強くなるだろうか。
■日本が東アジア共同体を謳うとき、二通りの可能性がある。日本が中国様の冊封体制に喜んで組み込まれる。あるいは、中国と本気で勝負して、東アジアの盟主の地位を確立する。中国とともにリーダーシップを発揮して、なんて考えはありえない。リーダーは普通一人なんだ。中国は後者の方を懸念しているので、鳩山首相が東アジア共同体構想を訴えても、いまひとつ反応がにぶいわけだ。
■ちなみに、鳩山首相がニューヨークの胡錦濤主席との会談で、「中国とは兄弟のような友好関係を築きたい」といって、東アジア共同体構想を説明したとき、ネット上の掲示板では「日本人ってあほの首相を選んだのか?」→「いや理想主義者だ」とか、「まったくもって凶弟ね」とか、「中国が指導する大東亜共栄圏を支持する」とか、中国の愛国主義的青年(憤青)たちの揶揄と反発の声が殺到した。
http://www.tianya.cn/publicforum/content/worldlook/1/232942.shtml
■もし、岡田外相の対米外交の先にあるものが、中央アジアにおける日本プレゼンス強化であるなら、中国に対する歯の浮くようなリップサービス、頼まれもしないのに「村山談話の踏襲では不十分」「言葉より行動だ!」とまで言ったのは、中国を油断させるための擬態かもしれない?
■いや、私がそう思いたいだけなのだ。対米外交のねばりぶりに比較して、中国に対しては寝転がって腹をみせる犬ころみたいに見えてしまうのは、あまりになさけない。中国市場をねらうイオングループだから、矛先がにぶるのかと、疑ってしまうよ。
■というわけで、岡田外相の言動にはこれからも注目したい。彼が原理主義なのか、現実主義なのか、見極めたい。ちなみにとある女性誌によると、牡牛座で血液O型の女性というのは、ロマンチストなリアリストなんだそうだ。私のことなのだが、妙に納得している。
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コメント

  1. 私的ノート より:

    政権交代してから民主党の動きに注目が集まっていますね。
    政治について考えさせられます。

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