中国安売り電化製品トップだった「国美電気」はなぜ狙われたか。全土200都市に1350店舗から700のチェーン店へ転落した影で・・・。
国美電気グループの社長、黄光裕は16歳のときに思い立ち、高校を中退して屑拾い稼業でこつこつと貯めた資金500元を元手に独立した。国美は英語名GOME(発音はグオメィ)。かならず安売り店のチェーン化で成功するのだ、と。
国美の成功物語は次のように知られる。最初、かれは内蒙古自治区へ偽ブランド商品などを担いで行商に往き、これがあたった。人々が欲しがる品物があり、しかも流通システムが悪いので、内蒙古では、いつでもモノは払底していた。
経済発展とともに中国人の所得が上がり、日本と同様に中産階級の購買力が急激に上昇するとヤマダ電機、ベスト電器、ビッグカメラ、LAOXなどのような日本型量販店が中国でも儲かるとの先見力が働いて、黄は「国美」を立ち上げたのだった。
国美はまずデルのコンピュータを売ることで有名になる。電気製品の安売りからエネルギー、不動産、製薬業にも進出した。そして黄光裕は2004年に香港に上場を果たした。
過去五年間というもの、中国財閥ランキングで第一位が三回、『フォーブス』でも中国財閥第二位にランクされた。個人資産は6200億円(フォーブスは黄の個人資産を2500億円と見積もったが)。
全土で従業員四万人、海外にも進出する準備をしていた。ライバルは蘇寧電気である。
▲賄賂は文化、収賄が常識、なにか文句あるか
しかし共産党独裁の政治制度のもとで、民間人がビジネスに成功すると賄賂を欠かせない。賄賂こそは中国の文化である。
額がすくないと、権力は、この企業を横領するか、つぶしにかかる。ロシアでプーチンが、イラクでサダムがやったように。
09年11月、黄光裕は突如、拘束された。10年二月に起訴されたが、それまで留置所におかれたまま。この人権無視の捜査の遣り方にヒューマンライトをいう団体らは抗議したが、無駄だった。
容疑は『インサイダー取引』。かれの兄が経営する『山東金泰集団』の株価操作という嫌疑である。
人民元八億元を不正に外国通貨に交換し、海外からの投資にみせかけて、じつはインサイダー取引を展開して株価を操作、けっきょく三億元強(46億円)もの不当な利益を上げたというのだ。
そして5月18日、判決が出た。懲役14年、罰金額はじつに五億元と二億元相当の財産没収。黄夫人もインサイダー取引の容疑で罰金刑がくだった。
しかしインサイダー取引など、中国では日常茶飯、共産党幹部の多くが関わっていることである。驚きにも値しない。
一方で矛盾するが温家宝首相率いる中央政府は『汚職撲滅』を謳っており、共産党としては幹部に関わりの薄い民間人の「スケープゴート」が必要だったのだ。
ちなみに中国のジニ指数、0・4から0・61に跳ね上がっている。つまり中国GDPの61%が特権階級によって寡占されており、庶民の怨念が募っている事実を証明するかのような数字である。
犠牲の山羊として、格好の対象は貧乏から成り上がって中国第二位の財閥となった有名人が、うってつけというわけだった。これでインサイダー取引の黒幕らは、今夜も「よく眠れる」だろう。
杜父魚ブログの全記事・索引リスト
5600 黒幕らは、今夜も「よく眠れる」 宮崎正弘
宮崎正弘
コメント