7053 韓国が核を持ってこそ、北は交渉に応じる  古沢襄

韓国にも核武装論がある。朝鮮日報のレポートがそれを示している。韓国の核武装論は今に始まったことではない。朴正煕大統領の政権時代の1970年に核開発計画に着手した歴史がある。
核拡散を怖れているワシントンには秘匿した極秘計画で、1972年にフランスと組んだ韓国独自の核計画に着手。1974年に韓仏共同事業により、一年間で約10キロのプルトニウムを生産できる再処理工場の技術設計を完成している。10年後には広島型の原子爆弾を二発持つといわれた。
この計画は韓国内部の密告でソウルの米大使館が知るところとなって、米大使館からワシントンに「韓国が核兵器開発の初期段階に入りつつある」と極秘の情報評価報告が送られた。ワシントンではフォード大統領、キッシンジャー国務長官が事態の重大さに衝撃を受けて、韓国の核開発計画の阻止に動いた。
米国が取った策は、フランスに圧力をかけて、核協力を思いとどまる説得工作に力点が置かれ、これが成功している。しかし朴大統領はあきらめたわけではない。核を持つことが、北朝鮮の南進を阻止する最高の手段と、後になっても側近に言い続けていた。
「韓国が核を持ってこそ、北は交渉に応じる(朝鮮日報)」のレポートは北朝鮮の南進を警戒する韓国の素朴な感情であろう。だが、それは核拡散を怖れる米国の核政策と正面からぶつかる。日本で核武装論が生まれれば、同じ状況が出るだろう。
<延坪島を砲撃し、哨戒艦「天安」を沈没させた北朝鮮が急に態度を変え、南北対話を促してきた。そして、北朝鮮と示し合わせたかのように「対話」と「6カ国協議」を勧めてきた中国は当然「対話」を迫るはずで、米国も対話の方向にかじを切る気配だ。オバマ政権は、いまだ核の放棄を前提に対話から一歩引いているように見えるが、韓半島(朝鮮半島)西側の小さな島が原因で大きな戦争に巻き込まれる事態を恐れ、結局は対話の道を選ぶものとみられる。
韓国は再び北朝鮮の手口に引っ掛かっている。北朝鮮は対話・会談を行うと口にしながら、無理な条件を突きつけて交渉を決裂させ、姿をくらました後、核実験・銃撃・テロなどで緊張状態を高め、再び対話モードに復帰する振りをする。これが、過去20年間にわたって繰り返されたパターンだ。過去10年間の韓国左派政権時代に甘い汁を吸った北朝鮮は、李明博(イ・ミョンバク)政権になってカネとコメの供給が断たれると、核の脅迫や砲撃などの軍事的挑発で南を揺さぶり、今度は「対話」しようと言い寄ってきたわけだ。
その度に決まって登場する北朝鮮の強力な武器が、すなわち核だ。核実験に続いて濃縮ウランを公開し、新年の社説では「核の惨禍」に言及し、依然として韓国を脅迫している。6カ国協議にせよ、南北対話にせよ、キーワードはいつも「北朝鮮の核」だった。韓国は、北朝鮮の核放棄を前提に共栄を約束しており、米国も韓半島の非核化、北朝鮮による核のコントロールを6カ国協議の目標にしてきた。
にもかかわらず、韓半島問題の専門家、北朝鮮研究者、学者や政治家の中に、北朝鮮が実際に核を放棄すると信じる人はほとんどいない。北朝鮮は、自分たちは核を放棄した日に崩壊すると信じていると考えられるからだ。言うなれば、韓半島の当事者をはじめ、周辺諸国すべてが「非核化は不可能だと分かっていながらも、口ぐせのように言っている」対北交渉の虚像にしがみついているのが、今の姿だ。いかなる境遇にあっても北朝鮮が核を放棄することはないと分かっていながら、口さえ開けば「北朝鮮の核の放棄」を叫ぶ、これほど自己欺瞞(ぎまん)で、二律背反はない。
こうした偽善の枠から抜け出し変化を模索する道は、韓国も核を持つというものだ。韓国が核を保有する日、南北の間にはようやく実体ある交渉の道が開ける。逆説的だが、南も核を保有することにより、相互けん制と核軍縮交渉を行うことで、韓半島の非核化が可能になる。韓国は、約20年間かけても北朝鮮の核問題を何一つ始末できない世界の大国の無能と限界に、自分たちの生命と国土の保全を委ねてきた。韓国は、置き去りにされている惨めな現実に、これ以上我慢できない。今こそ韓国自らが行動しなければならず、そのためには韓国が核を持たなければならない。
全世界で今最も戦争の脅威が高まっている地域は、言うまでもなく韓半島と、中東・アフガニスタン地域だ。中東・アフガニスタン地域は、お互いの核がバランスを保っていることを知っている。ところが韓半島に限っては、北が核を使って脅迫し、大口をたたいている一方で、南は核を持たず、北の核の恐怖におびえているばかりだ。米国の核の傘がその「機能」を代行するというが、韓国の核保有と米国の核の傘は、本質的に異なる。延坪島事件一つで震え上がっている米国が、北朝鮮による核攻撃の際、中国との全面戦も辞さずに核の傘を行使する理は、万に一つもないからだ。それが核の傘の限界で、北朝鮮が核を捨てない理由がそこにある。核兵器は交渉の対象になるが、核の傘は交渉の対象にはならないというわけだ。
韓国の「核」は、正確に言えば、攻撃用でも防御用でもない。南北のバランスを取るけん制用にして対北交渉用だ。冷戦時代に米国とソ連が核兵器交渉に成功したのは、まさに核のバランスがあったからだ。どちらか一方が傾いていれば、交渉は決して成功し得なかった、というのが専門家らの見解だ。
ここには二つの前提条件がある。まず6カ国協議の当事国が、いつまでに北朝鮮の核を廃棄あるいは管理システムを作り出すのか、リミットを定め、それまでにいかなる回答も引き出すことができなかった場合、韓国が核開発に乗り出すという条件を設定する必要がある。もう一つの条件は、韓半島の緊張要因が永久に除去されるか、統一が達成される時点で、核を自発的に廃棄することを全世界に公表するというものだ。韓国は、全世界の懸念を無視し排他的権利として核保有に執着しないことを明確にしなければならない。
全世界が北朝鮮の核に対し打つ手がなくなったことが明らかになった時点で、韓国の指導者らが、自分たちが核を持って初めて北朝鮮が譲歩し、歩み寄ることを韓国国民と世界に説得し、核保有を公論化する勇気と知恵を示すことを願う。それこそが、韓半島非核化の近道にして要諦だ。(朝鮮日報)>
杜父魚文庫

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